ソフトバンクグループの株価も上昇
9月15日の東京市場では、ソフトバンクグループ(SBG)の株価が約3%上昇しました。SBGの時価総額は約10兆円で、同じく上場したArmとほぼ同等です。Armの株価が上昇すれば、SBGの企業価値も上がる見込みがあります。
両社の株価は連動する可能性が高く、SBGがAI関連銘柄として注目を集めることも予想されます。SBGはこれまで中国のアリババの株式を所有していましたがほとんど売却しており、現在はアームが保有株の柱となっています。SBGはアームの株式を担保に資金調達する可能性があるほか、将来的にはArmの株式を追加で売却し、資金調達を行うことも考えられます。
AI株の試金石に
今年に入ってAI株は上昇しており、アームのIPOに注目が集まりました。自動会話プログラム「チャットGPT」に採用されている生成AIの登場により、AIに関連する銘柄が上昇していたからです。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は年初から約40%上昇しています。AI向け半導体の雄である米エヌビディアの株価も3倍以上に急騰し、AI株ブームがアームのIPOにとって有利に働いたことは確実です。
アームのチップは消費電力が少ないため、スマートフォンのほぼ全てに搭載されています。同社は自社の技術や設計を使用する機器にライセンス使用料やロイヤルティーを課しており、AIが使用するセントラルサーバーのプロセッサーなど、他の市場でも使用が期待されているのです。
しかし、AI分野におけるアームの将来性に賭ける投資家はまだ少なく、アームが急成長する保証はありません。投資家がエヌビディアのような急成長を今後も期待するかどうかにかかっています。
最近では、AIを巡る熱狂も少し落ち着いてきました。それでも、今年はAI熱が半導体株をけん引しており、アームのIPOは市場の期待に対するストレス(耐性)テストになりそうです。
アームがエヌビディアのような成長を遂げることは確実ではありませんが、AI分野が今後ますます発展する中で、アームの将来性に期待する投資家が増えることもあり得ます。
ただ、アームには地政学リスクもあります。アームの中国での売上高比率は25%であり、経済や政治的なリスクの影響を受けやすいからです。景気減速や規制強化などが足元の業績に影響を与える可能性もあります。これらのリスクを考慮しながら、アームの株価がどのように推移するかに注目です。
執筆/山下耕太郎(フィナシー/Ma-Do 投資信託研究会)