半導体の設計分野で存在感を発揮するARM(アーム)が、9月14日にナスダック市場に上場しました。「チャットGPT」など生成AIの爆発的成長が注目を集める中、省電力設計に強みを持つ同社のアーキテクチャ(構造)への期待が高まっています。

この記事ではアームの企業概要と、株式市場に与える影響について解説します。

ARM(アーム)が9月14日にナスダックに上場

9月14日、ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計企業アームが米ナスダックに上場しました。初値は56.10ドルで、575億ドルの時価総額を誇り、2023年最大の新規株式公開(IPO)となりました。

アームは、スマートフォン向け半導体のシェアで市場を圧倒し、車載半導体やデータセンター向けなどの分野でもシェアを広げています。CEOのレネ・ハース氏は、中央演算処理装置(CPU)の出荷数拡大と、各CPUが搭載するコア数の増加を背景に、成長ストーリーを投資家に訴えています。

英国ケンブリッジに本拠を構える半導体企業アームは、これまで設計した半導体がスマートフォンの99%以上に採用されるなど、世界の人口の約7割が同社の技術を利用しています。2023年3月期通期の売上高は、前期比1%減の26.8億ドル、営業利益は6%増の6.7億ドルでした。スマホ市場が低迷する中、同社の成長戦略として、AI関連やクラウド、自動車向けでの市場シェアの拡大が期待されています。

ソフトバンクグループが出資

SBG(ソフトバンクグループ)は、今回のアーム上場で10%程度の株式を売り出すことを発表しました。これまではSBGが75%、ソフトバンク・ビジョンファンドが25%保有していました。ですから、アームの上場後、SBGはアームの米国預託株式を90%前後保有することになります。

そして、アップルやエヌビディア、グーグルなど、半導体やテック関連の10社が少額出資する予定です。

アームは2016年にソフトバンクグループ傘下に入りましたが、当時はロンドン証券取引所に上場していました。2020年にはエヌビディアへの売却で合意したものの、競争当局が難色を示したことから断念し、上場を目指してきました。

そして、7年ぶりに米ナスダックに上場したのです。アームは自動運転やデータセンター関連の半導体開発に取り組んでおり、エンジニアが社員の半数以上を占めています。そして、上場に伴い、人材獲得を強化する予定です。株式相場をけん引するAI関連の需要急拡大が見込まれる半導体関連銘柄として、マーケット関係者から注目を集めています。