長期金利としての役割

最後に「長期金利としての役割」を解説します。長期金利とは、直近に発行された10年国債の利回りのことで、これは現在の欧米などでも同様です。その国の金利を示す大事な指標となっているのです。

債券の利率と額面金額は一定のため、債券の「利回りが上昇」するためには、年間あたりのキャピタルゲイン(額面-買付単価)を増加させる必要があります。買付単価が下がる、つまり「価格が下がる」ことにより、キャピタルゲインが増えます。それを年間あたりに換算すると、「利回りが上昇」します。

反対に「価格が上がる」とキャピタルゲインが減少し、それによって「利回りが低下」します。このように、債券の利回りと価格は反対方向に動くのです。

これを国債に置き換えると、国債の利回りが低下すると国債の価格は上昇し、国債の利回りが上昇すると国債の価格が下落することになります。ここが債券を見るうえで最も注意すべきものとなります。

このように、債券は債券市場で売買されることで利回りが上下し、価格はその反対方向に動きます。利回りは物価や景気動向などに応じて動くものなのです。

国債の利回りである長期金利も同じであり、国債そのものの需給のバランスなどに応じて動きます。国が財政支出を増やし、その財源として国債を大量に発行すると需給バランスが崩れ、国債の価格が下落(利回りが上昇)します。

また、海外、とくに米国債の利回りの動向なども日本の国債利回りの変動要因になります。

このように、本来であれば長期金利は市場で形成されるものです。しかし、2016年9月から日銀が短期金利だけでなく、長期金利も誘導目標 ※8に加えています。長期金利、つまり10年国債の利回りを一定水準に抑え込むという政策を採ってきたのです。

※8 日銀がオペレーションによって操作する目標。

長期金利のコントロールを導入する前まで、日銀は「長期金利は市場で形成されるもの」として扱っていました。では、どうして日銀は金融政策の誘導目標にして、長期金利をコントロールしようとしたのでしょうか。この疑問についてもしっかり理解する必要があります。

●第2回(国会の成り行き次第? 常に発行可能なものも? 国債の知られざる“決まり事”)では、国債の種類や、憲法や財政法での取り扱いについて解説します。

『知っているようで知らない国債のしくみ』

久保田博幸 著
発行所 池田書店
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