「黒田バズーカ」といわれた日銀の異次元緩和が実行された2013年4月から10年が経過した。この10年で株価は大幅に上昇し、デフレ(物価下落)で苦しんでいた日本経済にもインフレ(物価上昇)の兆しが出てきた。日銀の政策の功罪は、様々に論じられるが、せっかく上向いた株価や賃金上昇などの環境を逆転させるようなことのないような「金融正常化」の道を歩んでほしいものだ。

日銀が現在(2023年3月末時点)保有するETF(上場投資信託)は簿価で約37兆円、時価では57兆円を超えると推計される。2010年12月から、12年半にわたってコツコツとETFを買い続け、受け取る分配金だけで年間1兆1,785億円に達し、2023年6月末現在で含み益は20兆円を上回っていることになる。日銀は決して儲けようとしてETFを購入してきたわけではない。そもそも「長期国債やETF、J-REITの買い入れによってイールドカーブ全体の金利の低下を促し、リスク・プレミアムの縮小を促す(資産価格のプレミアムに働きかける効果)」という量的金融緩和策の一環として、ルールに則って機械的に購入し続けてきただけだ。

2010年12月にスタートした日銀のETF買い

日銀は2010年12月15日、1年間で残高上限4,500億円をメドに国内株価指数に連動するETFの購入を開始した。当時の購入対象は「TOPIX(東証株価指数)」と「日経225」に連動するETFだった。そして、2013年4月に黒田日銀総裁による「量的・質的金融緩和」(黒田バズーカ)がスタートすると、ETFの買い入れ額は一気に拡大した。2013年4月からの1年間で約1兆3,000億円と前年度の2倍の額を購入した。そして、16年3月期は約3兆円、17年3月期には5.6兆円、18年3月期に6.2兆円と購入金額は年々増大する。21年3月期まで年間5兆円を超える金額でETFの購入を続けた。その後、22年3月期と23年3月期の購入額は年間5,000億円程度に縮小し、2023年4月以降は6月末までETFの購入実績はない。

日銀のETFの購入の仕方は詳しく情報開示されていないため想像する他はないが、予め年間の購入額を決定し、市場が下落したタイミングで購入してきたことがわかっている。1日あたりの購入額は、当初は150億円以下だったが、徐々に拡大し、2014年には380億円、2016年には745億円、そして、2020年3月の「コロナ・ショック」の折には、1日あたり2,016億円の購入を記録した。2021年3月までは、市場が前日比0.5%以上下落した時に購入される傾向が強く、株式市場では「日銀の0.5%ルール」という言い方をしていた。ところが、株価が十分に値上がりした2021年3月以降には「0.5%ルール」が適用されないようになり、「2%程度の下落がないと日銀は動かない」といわれるようになった。

実際に日銀が公表しているETFの購入金額の推移に従ってETFを購入した場合、その購入したETFによって日銀が儲かっているのかどうかを検証してみた。実際には、日銀が購入するETFは、「TOPIX連動型」だけではなく、「日経225連動型」、「JPX日経400連動型」、「設備・人材ETF」など複数のETFを使い、さらには、市場が開いている時間であればいつでも購入することが可能だが、分かりやすく計算するため、「TOPIX」の指数終値を使って、購入日当日の終値で購入したとして計算した。指数を使っているため、計算結果に信託報酬等の運用コストは反映されていない。

 

シミュレーションの結果は、2023年6月末現在で、ETFの購入元本37兆848億円に対し、TOPIX終値での評価額は57兆3,585億円になった。このシミュレーションによると、日銀がETFの購入を開始してから2年を経過した2012年11月末以降、元本に対して評価額が上回る状態が継続する。2016年2月12日や2018年12月25日(トランプショック)など、TOPIXが前日比5%程度大きく下落するようなことがなければ、評価益が安定的にプラス圏を維持することができた。