異次元緩和10年で巨大に膨れ上がった日銀資産

日銀の黒田東彦・前総裁が10年間にわたって行った「異次元緩和」の評価は難しい。白川方明・元総裁のように、異次元緩和について「大いなる金融実験」とみなして、インフレや経済成長に与える影響は「ささやかだった」と失敗に終わったという見方もある。しかし、現時点において国内株式のETF購入という点だけ取り上げても20兆円余りの含み益を確保し、毎年1兆数千億円の分配金を得る資産を作った事実に変わりはない。「異次元緩和」は当初は2年間程度の短期で結果を得るはずだったものが、10年におよぶ長期にわたる緩和策になってしまったことは、「想定外」だったろう。

また、株式の保有だけでなく、日銀の国債保有額は既に581兆円規模となっており、異次元緩和がスタートした時点と比べて約6倍の残高に拡大し、市場の流動性をゆがめるほどに巨額になってしまっている。この国債の保有残高も現在の規模で持ち続けるわけにはいかないだろう。この規模は株式ETFの保有残高をはるかに超える巨大さだ。

この巨大に膨れ上がった日銀の資産をどのように正常化していくのかということは、今年4月に就任した植田和男総裁を筆頭とした執行部に託されている。あまりに膨れ上がった資産残高に思考停止に陥ることなく、日本経済の復調を確かなものにする使い方を考え続けてほしいものだ。

文/ 徳永 浩