勤務先の企業で導入しているなら、利用の検討を

企業型確定拠出年金(DC)には、企業の退職金の一部(もしくは全て)として運営されている制度と、加入・非加入を従業員本人が決められる選択制があります。
後者の選択制は、前者が退職金であるのと異なり、福利厚生の位置づけとして実施されている場合が多いようです。

近年、増加傾向にある選択制DCについて、メリット・デメリットを考えてみましょう。

選択制DCの多くは、DC掛金にするのか給与と一緒に受け取るのかを選択する仕組みです(賞与や退職時に受け取るケースもあり)。

統計データがないので明確なことはわかりませんが、選択制DCの利用率は、従業員の7割が活用しているといった企業もあるものの、平均的には3~4割程度かと思います。

選択制DC導入企業でアンケートをすると、「利用しない理由」は「60歳まで引き出せないから」「いま、使えるお金を減らしたくないから」という回答が大勢を占めます。「60歳まで引き出せないから」という回答は“60歳まで”が遠い若年層のみならず、年代にかかわらず高い傾向があります。

「いま、使えるお金を減らしたくないから」という回答は、どちらかというと30~40代に多くなっています。お子さんの教育費や住宅ローンなどで、お金の使い道が決まっている層だと思われます。

導入企業に限定せず広くアンケートした結果では、企業型DCを利用しない理由として「あてはあまるものはない」が41%を占めたものの、「制度のことがよくわからないから」が25%と続きました
※「確定拠出年金に関する意識調査2023」野村アセットマネジメント 資産運用研究所

「制度のことがよくわからない」理由は、一昔前とは異なり、情報過多のためとも考えられます。最近では各種SNSで運用のトピックを目にするようになりました。手軽に情報を集められる一方で、断片的な内容になりがちで、比較検討するのが難しいのかもしれません。

見過ごしていないかチェック! 選択制DCのメリット

選択制DCとiDeCoを比較してみましょう。税優遇効果は基本的に選択制DCもiDeCoも同じですが、選択制DCのメリットと思われるのは、主に下記4点です。

1. 開始時の手続きが簡単
iDeCoは金融機関を選択して各種書類を提出する手続きが必要ですが、選択制DCは企業が設定しているため、人事部や担当部署に手続きするだけですみ、手軽です。
2. 手数料
選択制DCでは、運営管理手数料等の費用が(多くの場合)企業負担です。個人負担のiDeCoと大きく異なる点です。
3. 掛金をより多く拠出できる
iDeCoの拠出上限額は2.3万円です(会社員で他の企業年金制度がない場合の上限額)。選択制DCの拠出上限額は2.75万円(他の企業年金制度がある企業の場合)もしくは5.5万円(他の企業年金制度がない場合)と、iDeCoより多くの掛金拠出が可能です(選択制DCのみで制度設計されている場合)。
4.社会保険料を引き下げられる場合もある(ただし、社会保険料が下がると、社会保険・雇用保険等の給付額に影響します)

選択制DCのデメリットには、iDeCoのような金融機関の選択の自由がないこと、運用商品もあらかじめ定められた範囲から選ぶ必要があること、があります。またiDeCoであれば途中で掛金拠出をストップできますが、選択制DCの掛金は休職などの場合を除きゼロ円にはできません。なお、制度設計によっては選択制DCを選択すると残業代等に影響する場合もあるので、担当部署等に確認が必要です。

※選択制DCは「所得」として扱われない設計が多いが、iDeCoはいったん給与課税された資産から拠出するため、税の還付が発生(本人払込の場合)。