日本の半導体ブームは信越化学を押し上げるか
現在、日本はにわかに半導体工場の建設ラッシュが起こっています。2021年にファウンドリ大手の「TSMC」が熊本県に工場を建設すると発表したほか、2023年にはキオクシアやソニーグループなどが出資する「ラピダス」が北海道に先端半導体の生産工場を建設すると表明しました。また「ウエスタンデジタル」や「サムスン電子」も、相次いで日本進出を発表しています。
【日本に生産拠点の新設を表明した主な半導体企業】
2021年10月:TSMC(熊本県)
2022年4月:キオクシア、ウエスタンデジタル(三重県)
2023年2月:ラピダス(北海道)
2023年5月:サムスン電子(神奈川県)
世界の半導体市場はデジタル化で成長してきたものの、日本は取り残されてきました。一時は20%を超えていたシェアは大きく低下しており、現在は10%未満に落ち込んでいます。国内のラピダスやキオクシアはともかく、なぜ海外の大手は市場規模の小さい日本を目指すのでしょうか。
【半導体市場規模の推移】
出所:電子情報技術産業協会 世界半導体市場統計(WSTS)より著者作成
背景には安全保障上の問題があると指摘されています。現在、半導体は中国や台湾などで多く生産されていますが、近年は両地域で緊張が高まってきました。またアメリカは半導体サプライチェーンから中国企業の締め出しを強めており、半導体企業はこれらの地域に代わる生産拠点として日本を選んでいると考えられています。また日本には半導体製造に関連する機械や素材でトップシェアを持つ企業も多く、設備や材料を調達しやすいという事情もあるでしょう。
信越化学は海外ネットワークに強みのある企業ですが、国内にもシリコンウェハやマスクなど半導体に関連する電子材料の生産拠点を多く持っています。国内で半導体の生産が高まれば、信越化学にも恩恵がありそうです。