父の死がきっかけで発覚した嘘
実家では2年前、父が心筋梗塞で急死しました。突然のことでみんな茫然自失でしたが、母や姉と話し合い、実家の不動産や父名義の預貯金はとりあえず全て母が相続することに。父は上場企業に勤めていましたが課長止まりだったので、退職金や年金もそれほど多くなく、相続税の心配は無用でした。
しかし、父が存命中は世帯で月額28万円あったという年金が父の死後には17万円にダウンしてしまい、母は先行きに不安を感じ始めたようでした。
「私1人ならどうにでもなるけれど、梓や七海のことがあるからね。七海はもうすぐ大学受験でしょ? 七海の成績だと奨学金は難しそうだから、入学金や授業料も払ってやらなきゃならないし……。お前のところは共働きだから、少しは都合できない?」
ちょっと待ってよ、と思いました。
「お姉ちゃんは七海の養育費をもらっているんじゃなかったの?」。慌てて母に確認すると、姉は離婚後、慰謝料も養育費も一切受け取っていないとのこと。そこで初めて、両親が姉に毎月15万円の生活費を渡していたことを知らされたのです。
父が残した現預金の残高は1500万円まで減ってしまい、このまま同居を続けていたら10年も経たないうちに蓄えが底をついてしまうとこぼす母に、言葉を失いました。
思えば母は、子供の頃から姉には大甘でした。姉がディズニーランドに行きたいと言えば連れていってあげる。洋服を欲しがれば買ってあげる。飽きっぽい姉が着なくなった服は私のところに回ってきます。
姉はフリルのブラウスやロングスカートといった女の子らしい服が好みですが、ショートカットで色黒の私に似合うわけがありません。「夏美、なんかへんちくりんだよね」と大笑いする姉を何度殴り倒してやりたいと思ったかしれません。
自立を促されてまさかの逆ギレ
相変わらず姉に甘い母に腹を立てながらも、家に帰った際、姉に「お父さんが亡くなってお母さんも大変だし、お姉ちゃんもそろそろ自立しないとね」とやんわり意見したところ、「あんたに私の何が分かるの⁉」と逆ギレされました。
「あんたは親のお金で大学まで行かせてもらって、今は会社でも役付き。息子たちも成績優秀で将来は安泰じゃない。でも私には何もないの。出戻ったシンママ(シングルマザー)の気持ちなんて、あんたに分かるはずがない!」
突然の逆ギレに驚いている私を前にして姉は非難の言葉をまくしたて、その後も意見を聞こうとしませんでした。
●逆ギレする姉の言い分とは!? 続きは後編【「アイドルの沼」から抜け出した姉―見つけた“推しより大切な存在”】で紹介します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。