物流コスト、人材不足の問題

物流コストも一段と上昇する可能性があります。

物流・運送業界ではかねてから「2024年問題」と言われている通り、働き方改革法案によってトラックドライバーの労働時間に上限が設けられます。その結果、ドライバー1人あたりの走行距離が短くなることで運べる荷物が減る恐れがあるのです。

その上、問題になると思われるのが人材不足です。

みずほリサーチ&テクノロジーズが今年4月28日に発表した「みずほリポート」によると、労働集約的なサービス業種を中心に人手不足が深刻化し、中でも運輸の正社員は大幅な不足に陥ると見られています。

このように、労働時間の短縮と人材不足という二重の制約によって物流サービスの供給が制限される一方、需要はECの隆盛によって盛り上がっていますから、価格が一段と上昇しやすい環境になると言えます。

人件費の問題

また、値上げ要因の中では最も影響度の低かった「人件費」ですが、今後は動向に注視する必要があります。

みずほリポートにもあるように、遠くない将来に日本国内では生産年齢人口の減少ペースが加速し、企業の人手不足感が一段と強まる見通しです。今年の春闘でも多くの企業が賃金の引き上げに応じており、今後もその傾向は続くでしょう。

人手不足が深刻化すれば、人材確保のために賃金水準を引き上げざるを得ず、それがさらなる物価高につながる可能性も否定できません。

消費者物価指数で分かる値上げの傾向

今年4月28日に、総務省から東京都区部における4月の「消費者物価指数」が発表されました。通常、全国の消費者物価指数は調査月の1カ月後に発表されるため、4月の数字は5月中旬頃に判明するのですが、東京都区部の数字は中旬速報値といって、その月の数字が同月内に発表されます。全国の消費者物価指数の先行指標的な存在と言ってよいでしょう。

その東京都区部の消費者物価指数を見ると、変動が大きい生鮮食品ならびにエネルギーを除く総合の数値が、騰勢を強めていることが分かりました。

昨年4月時点の数字は、前年同月比0.8%の上昇でしたが、今年4月のそれは前年同月比で3.8%もの上昇となったのです。しかも、この数字は昨年4月にプラスへと転じて以来、一貫して前年同月比が上昇を続けています。

また、この傾向は全国の数字にも見られます。全国の消費者物価指数で生鮮食品及びエネルギーを除く総合の数字を見ると、東京都区部と同じく昨年4月にプラスへと転じた後、3月まで上昇の一途をたどっています。