ファンド選択時の信託報酬は数値のみで判断しない
一般的に信託報酬の目安は保有額の0.5〜2.5%ほどといわれている。ただし、繰り返しとなるが、信託報酬の高低のみの判断は控えた方がいい。ファンドの運用方針によって必要なコストが変わるからである。
大前提として、まずは投資信託の種類や投資先の選択が必要だ。投資信託には数多くの種類があり、いくつかの要素によって分類される。確認する項目は「投資対象地域(国内・海外)」、「投資対象資産(株式・債券・不動産投信など)」、「インデックスorアクティブ」などである。運用実績などをふまえて自分の運用したい商品を選んだ後、最終的な比較項目に信託報酬を挙げることが一般的だ。
ちなみに、投資信託の運用実績の指標として「基準価額」が用いられている。この基準価額は投資している全資産の時価合計に利息・配当収入を加え、信託報酬等の必要コストを差し引いて決められる。つまり、運用実績の判断時に基準価額の推移を見る場合、信託報酬の差も加味した結果で判断できるというわけだ。
先述の通り、アクティブ運用はインデックス運用より信託報酬が高い傾向にあり、一般的には1〜2%が多い。運用機関のなかには、投資対象の企業調査目的の面談や、経営陣へのリサーチに限らず、現場に足を運んでの調査をするものもある。高い信託報酬はベンチマーク以上の利益を追求するアクティブ運用に必要なコストといえるだろう。
なお、積極的に利益を求める投資スタイルを好まないならば、インデックス運用を検討してもいいだろう。実際に、長期運用前提の積立投資ではインデックスファンドが人気を集めている。2021年3月のデータでは、国内株式型の投資信託のインデックス比率は54.7%、外国株式型の投資信託のインデックス比率は82.6%にものぼった。
インデックスファンドの信託報酬は低めに設定されており、先述した「eMAXIS Slim」シリーズの信託報酬は0.1%前後である。また、つみたてNISAの公募株式投資信託対象商品の条件として政府は信託報酬の上限を国内資産対象のものは年率0.5%以下、海外資産対象のものは0.75%以下と定めている。これをひとつの判断材料としてもいいかもしれない。
将来のために資産を預け運用する投資信託において、信託報酬の高低はどうしても気になってしまうポイント。しかし、大切なのは信託報酬の数値そのものではなく、リターンがコストに見合っているか自身が納得できるかどうかである。
目標運用成果が同じとなるインデックスファンドの場合、単純に信託報酬の多寡が判断基準となる。しかし、市場平均を上回る運用成績をあげることを目指すアクティブファンドの場合はより慎重な判断が重要だ。
文/森瀧早織(ペロンパワークス)