公的年金は老後生活の“基盤”だが、私的年金も重要
ここまで、2023年度の年金額から、マクロ経済スライドによる給付の抑制を見てきました。
おそらく、マクロ経済スライドによる給付の抑制は当分続くでしょう。少子高齢化が進み、現役世代の保険料負担が重くならないようにするためには必要な策だからです。
ただ、だからといって「年金なんてアテにならないんだ!」と言うのも早計です。公的年金は終身で受給できることが強みとなっていますので、「長生きリスク」に備える強みはやはり大きいです。
また、物価や賃金など経済状況に応じて年金額を見直すことには変わりなく、インフレになってもその分がまったくそのまま目減りすることにはなりません。この基本的な仕組みを理解しておくことがポイントになります。
もっとも、老後の生活において、公的年金収入だけでは足りないのも現実です。自助努力も必要となっています。
日本は高齢期でも働ける時は働きたいと考える人も多く、事業主には、65歳までの雇用機会確保が義務化され、70歳までの就業機会確保も努力義務化されています。定年後、たとえフルタイム勤務は難しくても、今後拡大することが予想される高齢期の働く機会を活かし、働くことも必要となってくるでしょう。また、近年、公的年金の改正に合わせて私的年金も改正され、企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できる年齢も長くなり、こうした私的年金を増やす機会も増えつつあります。
「人生100年時代」において、公的年金を受給するまでは自助努力でカバーし、長生きしても終身で受けられる公的年金は繰下げ受給で増額させることも検討に値するでしょう。