日銀総裁って何をするの?

そもそも日本銀行総裁の仕事は何でしょうか。

日本銀行は利上げや利下げといった金融政策を実施し、金融システムの調節や物価の安定などを担っています。金融政策は会議(日銀政策決定会合)における多数決で決められ、日銀総裁はその代表として議案を提示したり賛否が同数となったときの最終決定を行ったりします。

日本銀行法では、日本銀行の目的を、「我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うこと」および「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資すること」と規定しています。

また、日本銀行が通貨および金融の調節を行うに当たっての理念として、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を掲げています。

出所:日本銀行 日本銀行の概要

当面の日本銀行の目標はインフレ率2%の定着です。2013年1月に前年比で2%以上の物価目標を設定し、その早期到達を目指して同年3月に総裁となった黒田東彦(くろだ・はるひこ)氏は大規模な金融緩和を実施しました。これにより、日本の金利は極めて低い水準へ誘導されるようになります。

【日本銀行の政策と日本国債利回り】

Investing.comおよび日本銀行より著者作成

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しかし、日本にとって物価上昇率2%は簡単な目標ではありませんでした。一般に、物価の上昇を目指す場合は金利を低く抑えます。その点で、黒田氏の政策はこれに合致するものでした。しかし黒田氏の在任中、年間の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の上昇率が2%を超えたのは2022年まで2回しかありません。日本に染み付いたデフレ体質は、強力な金融緩和をもってしても脱却できませんでした。

【消費者物価指数の前年比変化率(生鮮食品を除く総合)】

総務省統計局「消費者物価指数」より著者作成

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黒田氏は2023年4月に任期を終えます。大胆な政策で日本に持続的なインフレを起こそうとしましたが、その達成は後任の植田氏に委ねることになりそうです。