価格下落と為替ヘッジコスト増のダブルパンチ

外国債券が今回これだけ不振だった理由は主に2つです。

■金利上昇による価格下落
■欧米との金利差拡大による為替ヘッジコストの増大

実は国内だけでなく、海外の主要な年金基金も苦戦しています。ヘッジコストの影響が少ない代わりに、株式の比率が高いため、この間の債券と株式の同時安の影響が大きいのです。世界最大級の政府系ファンドでもあるノルウェー政府年金基金の損益率は2022年1月から12月まででマイナス14.1%でした。

景気後退懸念から「債券ルネサンス」の声も

こうした惨憺たる状況にもかかわらず、今、世界中で債券投資にマネーが流れ込み始めたようです。1月23日付の日本経済新聞によると、1月に入って投資信託などの世界の債券ファンドに3週連続で資金が流入し、その額は383億ドル(約4.9兆円)に達したといいます。

その理由として、国債や格付けの高い投資適格社債などはインフレに弱いものの、今後想定される景気後退(リセッション)には強いから、という市場関係者の見方を紹介しています。今後、金利サイクルがピークをつけるのであれば「債券が最も有望な投資先となる」として、クレディ・スイス証券の松本聡一郎・日本最高投資責任者は「債券ルネサンスの時代が始まる」と述べています。

私自身が旧知の企業年金基金の常務理事や運用執行理事に聞いた結果でも、債券セクターの中で運用商品のラインアップを増やすなどの対策はとるものの、債券の比率を下げる意向の基金はありませんでした。

債券は市場で価格が下落しても、満期まで保有していれば元本は保証されます。また、金利が上昇すれば、それだけクーポンの利子も上昇します。金利がピークをつけ「巡航速度」になるとクーポン収入を享受できますし、その後に金利が低下すれば価格上昇で利益が増えるという「好循環」の可能性も出てきます。