内藤隆史さん(仮名)は現在、埼玉県内の自宅に妻、大学生の長男、高校生の次男と4人で暮らしています。高校の校長、教育長を務めるなど地元の名士だった内藤さんの父親が他界したのは1年半ほど前のこと。父親はアルツハイマー型認知症で、数年前から介護施設に入居していたそうです。一人息子だった内藤さんは、血のつながらない継母と共に父親の遺産を相続したのですが、その際、継母にはある疑惑がありました。父親の預金口座から勝手にお金を引き出し、自分の口座に移し替えていたのではないかというものです。

亡くなった時点で、父親の口座には葬儀代程度のお金しか残されていませんでした。父親は3000万円近い退職金を受け取り、年金も月々25万円以上もらっていたそうです。リタイア後は教員仲間と好きなゴルフや旅行を楽しんでいたようですが、それにしても、遺産が数百万円というのはあまりにも少な過ぎるというのが内藤さんの見立てです。しかし、内藤さんはそのことで継母と話し合いをすることもなく、提示された遺産分割協議書にあっさり判を押しました。背景には、父親の介護を任せきりにしたことと、自分が継母に対して口にした言葉への後悔があったと言います。内藤さんに当時の話を詳しく聞きました。

〈内藤隆史さんプロフィール〉
埼玉県在住
51歳
男性
営業職
パートの妻、大学生・高校生の息子と4人暮らし
金融資産500万円

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父と息子の関係性は難しいと言いますが、うちもそうでした。父は地元・栃木の高校で校長を務めた町の有力者。一方で、私は学校の成績も平凡で、今で言うならFランクの大学を何とか卒業した“出来の悪い息子”です。父は一人息子の私に自分と同じ教員の道を勧めましたが、到底そんな気になれず、大学卒業後は大手電機メーカーの孫請け会社の営業となり、故郷にも戻りませんでした。