・冤罪の補償がたったの1000円?「袴田事件」が問う救済のあり方

2013年に「餃子の王将」を運営する「王将フードサービス」の当時の社長だった大東隆行(おおひがし・たかゆき)さんが殺害された事件で、今年10月、京都府警は犯人とみられる男を逮捕しました。

王将フードサービスが2016年3月に公表した第三者委員会の調査報告書によると、同社は創業時から不適切な取引を積み重ねており、大東さんはその解消に努めていたようです。

“黒い”取引解消に命を懸けた

餃子の王将は1967年12月24日、京都の四条大宮で誕生しました。大東さんは同店で1969年から働き始め、店長を経て2000年に王将フードサービスの社長に就任します。大東さんは、創業者の義弟(創業者の妻の弟)という関係でした。

王将フードサービスは主に創業家による経営時代、不適切な取引が繰り返されていました。不動産やゴルフ会員権などを介し、合理的な説明のつかない取引で約200億円が流出し、うち約170億円が回収できない状況に陥ります。

社長に就任した大東さんは、認知度や信用力の向上を狙って東京証券取引所(以下、東証)への上場を目指すようになり、上場審査に耐えられるよう不適切な取引の解消に臨みます。しかしその過程で、王将フードサービスは創業家と対立するようになりました。

結局、創業家が東証を含む関係各所に王将フードサービスが不適切な取引を行った事実を伝えたことなどもあり、同社の東証への自力上場はかなっていません(既に上場していた大阪証券取引所が東証と統合されたため、王将フードサービスは2013年7月に東証上場会社となる)。

王将フードサービスは2012年11月、同社が不適切な取引を行うに至った経緯などを調査する再発防止員会を設置しました。その報告書が取締役会で伝えられた翌月の2013年12月、大東さんは京都市の本社前で殺害されます。

今年10月、大東さん殺害に関与したとされる暴力団関係者の男が逮捕されました。報道によると、逮捕を受け多くの人が「追悼餃子」と称し、餃子の王将を訪れたようです。追悼餃子は事件直後も見られた現象で、当時は売上高を2億円も押し上げたといわれています。