金融教育よりも、大事なのは仕組みづくり

であるならば、金融教育よりも、誰でも資産運用を始められる仕組みづくりこそが重要なのではないでしょうか? 短期的な売買を誘発する仕組みでは成功体験どころか失敗してしまい、「二度と資産運用なんてしない」という人が出てしまいかねませんから、長期投資に誘導できるような仕組みができれば、より良いと思います。そのためにできることとして、私は2つあると思います。

1つ目は、しっかりとしたアドバイスが受けられる制度を作ること。アドバイスなのかセールスなのか分からない中途半端なものではなく、正しい金融知識やノウハウを持った専門家(例えばFP等)のアドバイスを受けやすい環境を整えるということです。投資家の方々とお話をすると、必ずと言っていいほど「相談に行く場所がない」という話を聞きます。まずはそれを整備することが必須と考えます。

2つ目は、アメリカの確定拠出年金のように、プロフェッショナルに管理された資産運用が自動的にできる仕組みを作ることでしょう。日本にも同じような仕組み(指定運用方法)はすでに存在しますが、それが十分に活用されておらず、結果的に指定運用方法の大半が銀行預金等になっています。

今の銀行預金の金利はほぼ0%ですから、資産はほとんど増えないどころか、インフレとなっている昨今、実質的にはマイナスのリターンとなっています。これでは成功体験を積めないため、指定運用方法をバランス型ファンドやライフサイクル型ファンドにするというのが2つ目のアイデアなのです。

これら2点を変えることができれば、投資家が成功体験を得やすい環境となり、成功から自信が得られて、もっと行動に移していくという正の循環が起こるのだと思います。

もちろん、私は金融教育が大事だという点に異論はありませんし、実際、大学でも金融リテラシーを教えています。ですが、知識がすでにアメリカや先進諸国とほぼ変わらない中では、さらに金融リテラシーが向上しても、資産形成をする人の割合が増加するとは考えにくいのです。それよりも、実際に資産運用がしやすくなるような仕組みを作っていくほうが効果的だと考えます。