大物OBは言った「報告書は金融庁の魂」、落とし前が必要に

報告書が幻となり、当局にはダメージコントロールの仕事が残った。金融庁のある大物OBは現役に対し、「金融審議会の報告書は金融庁の魂だ。それを否定されてどうするつもりだ」と言った。

一方、大炎上した市場WGはその後も何ごともなかったように存続し、メンバーの変更も見られなかった。淡々と議事が進む市場WGだが、2020年3月の会合に事務方が出した資料の中に「分かりやすい情報提供のあり方について」(「顧客本位の業務運営に関する原則」の5番に相当)として、販売手数料や投資リスクの種類、利益相反の有無などについて、多様な商品を「業法の枠を超えて」比較できる書面の導入を検討するとの記述があった。「重要情報シート」の提案だ。

これが彼らなりの落とし前だ。市場WGは炎上して終わりではなく、株式や債券、投資信託、さらには投資一任(ラップ)や貯蓄性保険までを包括的に比較し、国民が自分に有利なものを選べるような仕組みをつくり、顧客本位の業務運営(FD)の進展に大きく貢献した。つまり、報告書の受け取りは拒否されたが、「市場WGの議論に意味はあった」と総括するためだ。