物価高で一般消費者の負荷が増すものの、平均賃金は横ばい

物価高の影響を受けているのは企業だけではなく、従業員(一般消費者)の負担も増えている。帝国データバンクの「食品主要105社 価格改定動向調査(9月)」によると、10月の食品値上げ品目数は6500品目(9月1日発表時点)を超え、2022年(1-8月)の食品値上げ品目数は2万品目を突破。総務省が発表した8月の全国消費者物価指数(生鮮食品除く)は、前年同月比2.8%の上昇と消費税増税の影響を除けば1991年9月以来、約31年ぶりの伸び率だった。

一方で企業の平均賃金の推移を見ると、米国は1990年を1とした場合、20年は1.47。日本も同様に計算した場合、20年は1.04にとどまり、賃金が30年間でほとんど増えていないことが分かる。政府や自治体も賃上げを後押し、効果は出ている面もあるが、多くが物価高に賃上げが追いついていないのが実情だろう。

企業を取り巻く経営環境は、厳しさを増すばかり

20—21年は中小企業を対象とした持続化給付金や、いわゆる「コロナ融資」と呼ばれる資金繰り支援策により企業の倒産件数は低水準で推移していた。しかし、22年に入り全体的に倒産が増加傾向にある。これはコロナ禍の企業の資金繰りを支えてきたコロナ融資の返済も本格化し、コロナ融資を受けた後に倒産した「コロナ融資後倒産」も増えていることが要因だ。企業を取り巻く経営環境は厳しさが増し、好転を期待する材料が乏しい中、企業経営者は難しいかじ取りを強いられている。

執筆/鎌田 正雄

合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた