運用をプロに任せる投資信託の仕組みは個人の資産運用に合理的

——中野さんが考える投資信託のメリットは何でしょうか。

なぜ、一般NISAでは株式に投資できるのに、つみたてNISAは投資信託に限定されているのか。それも金融庁のお墨付きが得られている投資信託でしか積み立てられないのはなぜなのか。それは、個人が資産運用をするうえで、投資信託が最も合理的な金融商品だからです。

投資信託は、人類が発明したものの中でも、最も優れモノのひとつだと私は考えています。何しろ、誰でも買うことが出来ます。お金持ちしか買えないといった差別がいっさいありません。将来に向けて資産形成をしたいという人であれば、購入金額が1万円でも、あるいは1000万円でも、平等に門戸が開かれているのです。

そして、参加者全員がお金を出し合って同じ目標に向けて行動することによって、自分一人ではなかなか出来ないような投資手法を活用でき、かつ大きな目標を達成できます。これが集団投資スキームと言われる投資信託の本質です。もちろん個別株式での運用も大事です。とても素晴らしい会社なので、それを応援するという気持ちで投資するのは良いことです。

ただ、すべての人がそのような気持ちで投資するわけではありません。資産形成は大事なことだと分かっていても、自分で経済や金融、あるいはマーケットのことを勉強してから投資を始めるのは、あまりにもハードルが高すぎます。

でも、投資信託は運用をすべてプロの運用者に任せます。自分自身で経済や金融、マーケットのことを勉強しなくても、ただ投資信託を買うだけでプロが皆さんの大事なお金を運用してくれるのです。極めて合理的な仕組みだと思います。

——つみたてNISAの非課税枠が広がるとしたら、いくらになるのでしょうか。

以前、つみたてNISAの導入が検討されていた時、年間の非課税枠は40万円ではなく60万円を上限にする予定で話し合われていました。

しかし、さまざまな事情があって、ふたを開けてみたら40万円になっていたのですが、これを60万円に拡大するというのは、決して荒唐無稽な話ではなく、むしろ現実的だと思います。あるいは一般NISAとの一本化を目指すなら、現在の一般NISAの非課税枠である120万円まで拡大することも考えられるでしょう。そうすれば毎月10万円ずつ、ぴったりの金額で積み立てることができます。

現状、40万円の非課税枠だと積立額は月額で3万3000円です。これを年8%の平均リターンで20年間積み立て続けると、1943万7674円になります。でも、非課税枠が60万円になったら月5万円ずつ積み立てられるので、仮に年8%の平均リターンで20年間積み立てると、総額は2945万1021円になります。ほぼ1000万円の差です。
これは複利運用の原理で、投資する元本が大きくなるほど、絶対額の増え方も大きくなります。だから、本当に増やそうと考えているなら、投資する元本を大きくすれば良いのですが、それはゆくゆくで良いでしょう。つみたてNISAは1000円、5000円といった少額資金でも出来るので、まずは始めてみることが大切です。

——​いくらくらいから積み立てれば良いのでしょうか。

100円を20年間積み立てても、まとまった資産にはなりませんから、最低でも5000円くらいから始めたいところです。

つみたてNISAを始めるにあたって大事なことは、一度始めたらとにかく20年間続けることです。そうすれば、月々の積立金額は少額でも、チリツモで驚くくらいのお金に育っているはずです。まずは行動してみてください。

——​ありがとうございました