※この記事は、2022年7―8月に配信したフィナシー・セミナー「積立王子が解説!『資産所得倍増プラン』」をダイジェストにして記事化したものです。

資本市場へのメッセージとして政治的意図も見え

資本市場へのメッセージとして政治的意図も見え隠れ

——まず、岸田内閣が打ち出した「資産所得倍増プラン」が公表された背景について教えて下さい。

岸田首相が5月5日に、ロンドンの金融街であるシティで行った講演で、「資産所得倍増プラン」を打ち出しました。この時の講演内容は、基本的に「新しい資本主義」に関するものでしたが、なかでもこの資産運用倍増プランだけが具体的な中身に言及していたこともあり、海外のメディアからも注目を集めたわけです。

背景について申し上げると、いささか政治的な意図があるように感じられました。岸田内閣が発足した当初、資産課税の強化など、資本市場にとってフレンドリーではないことを言ったため、資本市場から嫌われたところがありました。それを挽回するための発言と考えています。当時、参議院選挙が近づいていたこともあり、国民からの支持を得たいという気持ちもあったのでしょう。

新しい資本主義に関して申し上げると、資産課税の強化については反対です。これは言うまでもなく、「貯蓄から資産形成へ」の流れに齟齬を来すからです。ただ、すべてが悪いとも思っていません。たとえば「自社株買いの制限」ですが、これは企業が利益から自社株買いをするならば、まずはその利益を従業員に支払う給料を引き上げたうえで、それでも余裕があるならば自社株買いをするべきだという話です。これをメディアは断片を切り取り、「自社株買いの規制」というイメージで報道しました。ですから、メディアもしっかり全容を報道する必要があると思います。

新しい資本主義のキーワードは「所得」です。所得が増えれば消費が促され、経済成長が実現します。そして、それを実現するための政策のひとつが「投資」です。それも、結果的に経済成長率を引き上げるための投資であることが重要です。

そこで強調されたのが人的資本や科学技術への投資、そして脱炭素社会実現に向けての先行投資によって日本の経済成長を促すのとともに、資産所得倍増プランで個々人の資産運用、投資を促していくというものです。