NISAの抜本的な制度拡充が進む可能性も

——資産所得倍増プランとは、具体的に何をもって所得を倍増させるのですか。

平たく申し上げると金融所得を増やすという話です。「所得を増やす」という場合、これまでは一所懸命働いて、お給料を増やすという意味でした。しかし、所得を増やす方法はもう一つあります。今の日本には皆さんが働いて得たお給料の一部を貯蓄に回していることで、2000兆円を超える個人金融資産があり、その半分が現預金です。現在は金利が低いので、預金にお金を預けたとしても、ほぼ金利が付かない状態です。だから、それをもっと効率的に働かせる。具体的には投資をする。それによって新しい富を生み出す。それを国民文化として広めていこうというのが、資産所得倍増プランの骨子です。

所得の源泉が労働だとしても、あるいは金融資産だとしても、所得に変わりはありません。これまで、国の経済規模はGDP(国民総生産)で計られてきましたが、これをGNI(国民総所得)に切り替えるという発想の転換でもあります。成熟国である日本には多額の個人金融資産がある。それを眠らせておくのはあまりにももったいないので、これを有効活用することによって、これからは金融所得も増やしていこうという考え方です。

——具体的に、どのようなプランが考えられているのでしょうか。

現実的なものとしては、NISAの抜本的な制度拡充です。これは岸田首相自ら言ったことなので、実現可能性は十分に高いと考えられます。現状、NISAは一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAという3つの制度が並存しており、それぞれ仕組みが異なります。これがNISAという制度全体を分かりにくいものにしています。

このうちジュニアNISAは2023年で廃止が決まっていますから、基本的には2つのNISAがどうなるのかということですが、ゆくゆくは一本化に向けて動くと考えられます。そもそも一般NISAとつみたてNISAを並べられて、では好きな方を選んでくださいと言われても、恐らく投資初心者には選べないでしょう。一般NISAは非課税期間5年で、非課税枠は年120万円。一方、つみたてNISAは非課税期間が20年で、非課税枠は年40万円。つまり一長一短なわけですが、老若男女の誰もが利用しやすい精度はつみたてNISAですから、この制度をどう変えて、一般NISAとの一本化をはかるのかという点は注目したいところです。たとえばつみたてNISAの非課税枠を、現在の年間40万円から引き上げることも考えられるでしょう。

あと、NISAという制度の恒久化です。現状、NISAは2042年までの時限立法ですから、これを恒久化することによって、いつまでも使える制度にすることも必要だと思います。