肺自体は年齢とともに衰えるが機能を改善することは可能

肺の機能を改善するには、運動が大切とされる。ジョギングを例にとると、当初は1キロ走るだけでも息切れしていたのが、いつの間にか5キロ、10キロと走れるようになることが多い。ジョギングなどの有酸素運動は繰り返すことで、体が酸素を有効に活用できるようになるからだ。運動時の肺による最大酸素消費が改善するためだとされる。

また、肺活量(息を最大限吸い込んだ後に肺から吐き出せる空気量)などの換気機能も肺の周辺の筋肉を鍛えることで改善される。肺の周りには、横隔膜や大胸筋など数多くの筋肉がある。ラジオ体操やヨガでも、呼吸を整えながら実践することで鍛えられるとのことだ。

呼吸法も大切だ。鼻から息を吸った後、口をすぼめてロウソクを吹くように息を長く吐く呼吸法は「口すぼめ呼吸」といわれ、肺の中の気圧を高めることで酸素が効率的に血中に入るよう促すそうだ。登山家の中にも、この呼吸法を活用する人が多いとされる。

水泳も呼吸機能の改善に有効とされる。高齢の方には、泳がないで水中を歩くだけの運動をする人がいるが、これでも十分に効果があるそうだ。水の中に立っているだけで水圧を受け、肺の下の横隔膜が押し上げられ肺の容積が小さくなり、体に入る酸素量が減少する。このため、より多くの酸素を吸入しようと努めることになり、呼吸時に使う呼吸筋が鍛えられる。呼吸機能の改善につながるとのことだ。

さらに水泳は、息継ぎをする時にできるだけ多くの空気を吸い込もうとするので、呼吸筋はさらに鍛えられる。ぜんそくの人に水泳を奨励するゆえんだ。

高齢になると、肺炎などの肺疾患による死亡事例が多くなる。中高年の時代から、意識的に肺周辺の筋肉を鍛えることで、肺の諸機能の維持・改善に努めることは欠かせないようだ。

執筆/大川洋三

慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。