「1000人の村」で考える保険の原価のイメージ

掛けている保険金額と、実際に支払われる保険金額に乖離があることが分かりました。ところで、そもそも保険の原価というのはいくらくらいなのでしょうか。ここでは1000人の村を例にして、保険の原価のイメージをお伝えしたいと思います。

【ある村の例】
・健康で、危険な仕事についていない30歳の男女が1000人いる
・その村では、10年に1人が亡くなっている
・村民はパートナーとペアで暮らしているが、貯蓄ができず、パートナーが亡くなると家計が崩壊してしまう
・パートナーが亡くなると、1000万円足りなくなる

この村で家計が崩壊することを防ぐため、村長が村民全員から1万円ずつ集めて1000万円のプール金をつくり、亡くなった方が出たとき、遺族にそのプール金を支払うという仕組みをつくったとします。これは相互扶助の考え方で、保険の原型です。この村の例で、住民から集める1万円を分割にした場合、1年あたり1000円、月々では約83円となります。これが保険の原価のイメージです。

では、これをビジネスとしてやると、どうなるでしょうか。1000人の家を回るのも大変ですし、普及するのに広告も必要かもしれません。また、保険証券をつくるなど、いろいろな経費がかかります。この費用はプール金と一緒に回収することになります。このようにして、保険はつくられているのです。実際の保険は予定事業費率・予定利率・予定死亡率などに基づいて設計されていますが、今回はあくまでイメージとしてご理解ください。

先程の月83円では経費をまかなえないため、仮に月々の保険料を1000円としましょう。すると10年間で12万円を1000人から集めることになりますので、1.2億円が集まります。それに対し、万が一の時に支払う金額は1000万円ですので、手元には1.1億円が残ります。これだけあれば、さまざまな経費に充てられます。このように考えると、保険では経費部分が非常に大きいということがお分かりいただけると思います。もともと還元率が非常に低いのが保険なのです。

最後にポイントを2つお伝えします。まず1つ目は、保険は何かあった人が助かって、何もなかった人は圧倒的に損をする仕組みになっているということです。ネット専業保険であっても、決して安くはありません。そもそも保険は損をするものだということを、まずは理解していただきたいと思います。

だからといって保険がいらないかというと、そうでもありません。十分な資産がある方は保険に入らなくてもいいと思いますが、お金を貯められていない人は、損と分かっていても入るしかないとすら言えるでしょう。

2つ目のポイントは、損だから保険に入らないのではなく、損だと理解した上で、できるだけスリムに入るという意識を持つこと。保険の仕組みを理解し、必要な保障に絞って入っていただきたいと思います。