・【上場企業初のコロナ破綻】世界的大手アパレルがまさか…株価4円の衝撃末路

「メタンハイドレート」という物質を聞いたことがあるでしょうか。「燃える氷」とも呼ばれ、永久凍土や海底~海底下といった低温・高圧下で氷のように固まったメタンガスのことです。

メタンガスは天然ガスの原料でもあり、メタンハイドレートは次世代のエネルギー資源として研究が進められてきました。日本周辺に多く存在していることが分かっており、もし実用化されれば日本は資源大国になるかもしれません。

メタンハイドレートの開発を手掛けるのが「日本海洋掘削」です。日本唯一の海洋掘削専門企業として知られており、メタンハイドレートにおいては産出技術の開発などを担当してきました。

しかし2018年、日本海洋掘削は一度経営破綻を迎えています。なぜ唯一の専門企業が破綻することになったのか、その理由について触れましょう。

日本唯一の海洋掘削企業が破綻

日本海洋掘削は日本唯一の石油・天然ガスなどの海洋掘削事業者として1968年に設立されました。国内外の海域で掘削サービスを提供しており、東京商工リサーチによると高い掘削技術を持つ同社は顧客から一定の評価を受けていたようです。

しかし原油価格の下落などにより石油会社の開発意欲が低下し、受注が減少したことなどから2018年3月期まで3期連続の営業赤字に陥ります。見通しの暗さから引当金として損失を計上し、同社は債務超過に転落しました。自力での再建を断念し、2018年6月22日に会社更生法の適用を申請します。負債総額900億円を超える大型倒産となりました。

出所:東京商工リサーチ「2018年(平成30年)6月度こうして倒産した・・・」

原油価格が下落した背景には「シェールオイル」があるといわれています。シェールオイルとは頁岩(けつがん)と呼ばれる岩石の層に残留した原油のことです。生産コストが高く採算が取れないことから生産が見送られてきましたが、採掘技術の向上と原油価格の上昇などから収益性が生まれ、2006年ごろから積極的に生産されるようになりました。この一連の流れを「シェール革命」と呼びます。

シェールオイルが市場に出回り始めたことで需給が緩み値段が下がりやすくなっていたところ、2014年11月にOPEC(石油輸出国機構)が原油生産量の維持を発表したことなどをきっかけに原油価格は急落しました。

出所:資源エネルギー庁 エネルギー白書2015

【原油価格(WTI原油先物)の値動き(2014~2018年)】

Investing.comより著者作成

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このような原油価格の下落などを背景に資源開発会社は投資を絞り、その受け皿である日本海洋掘削の業績悪化につながったと考えられています。

なお日本海洋掘削は2021年7月に提出した会社更生計画案が同年9月に認められ、現在も事業を継続しています。会社更生法の申請以降も新規受注を獲得しており、直近では2022年5月にマレーシアにおける掘削工事を受注しました。原油価格が足元で回復していることも同社の再建を後押ししているのかもしれません。