不妊治療をあきらめて、夫婦2人で生きることに

成美さんは45歳の会社員です。37歳のときに夫の貞弘さん(仮名)と結婚し、現在は一戸建ての持ち家にご夫婦2人で暮らしています。ご夫婦には子どもがいません。

「実は、結婚して1年ほどしても子どもができなかったので私の年齢のこともあり、不妊治療を始めたのです。最初の1年は会社勤めをしながら産婦人科に通いましたが、なかなかうまくいかなくて。私は子どもがとてもほしかったので、長年勤めた会社を辞めて、体外受精を受けることにしました」

不妊治療を受けるにあたってはご夫婦の協力が欠かせません。貞弘さんはどのようなスタンスだったのでしょうか。

「夫は私ほど子どもを作ることに熱心ではなかったけれど、ごく普通に子どもは欲しいという感じでした。ただ、不妊治療は女性の体への負担が大きく、私たちの場合は“やめるのも続けるのも私次第”という暗黙の了解はありました。私は薬の副作用でイライラすることもよくあり、夫は“腫れ物”に触るような感じのこともありました」

成美さんの不妊治療のお話には、経験した人でないと分からないさまざまな感情が浮かび上がります。

「もちろん、妊娠しないことが原因で夫婦がギクシャクすることもありましたよ。妊娠しなければ、それまでかけたお金もムダになるという思いから、余計に焦りました。私がお世話になったクリニックは地元でそこしかない、不妊治療専門の産婦人科でした。費用の面では、たぶん一般的な不妊治療の相場よりかなり安いと思います。私はトータルで3年弱通って、180万円くらいでした。
でも、100万円以上かかったあたりで、どこかで区切りをつけなくてはと思うようにもなりました。体外受精をしても妊娠しないと、どんどん『無理かもしれない』という不安がわいてきて。このまま不妊治療を続けると、やればやるほどやめにくくなると思ったんです。何も言わずにいてくれる夫を、息の詰まるような状態から解放してあげたかったですし。“これで最後”と決めて受けた体外受精でも妊娠しなくて……泣くだけ泣いて、それで不妊治療は終わりにしました」