もし借り換えをすぐにしていれば……

6年前、みどりさんはすでに住宅ローンの借り換えの重要性を認識していました。

住宅ローンは要件を満たせば金利の優遇を受けられる場合があります。この時、優遇を活用し、借り換えをしていたら、進学にかかる費用が賄え、さらにそれ以上の金額が浮き、老後資金準備にもプラスだったでしょう。

けれど、孝之さんにそのことを話しても全く動いてくれず……。ローンの契約者は孝之さんである以上、配偶者であってもみどりさんが借り換えをすることはできませんでした。

今申し上げるのは、“たられば”になってしまいますが、6年前と今の金利が変わらなくても、6年前のローン残高と借り換えを実行した時のローン残高は違います。残債が大きい分、借り換えにより支払う利息の差額が大きくなります。つまり、借り換えをしていれば払わなくて済んでいた利息を、6年間支払ってきたのです。

例えば、残債2000万円を返済期間25年、元利均等方式・ボーナス返済なしで返済すると、

・金利2%で月々8万4770円、総返済額2543万1000円
(うち利息分は543万1000円)

・金利1%で月々7万5374円、総返済額2261万2200円
(うち利息分は261万2200円)

・金利2%の後、6年目から金利1%になる場合、6年目までは月々8万4770円、6年目から月々7万7412円 返済総額2375万3376円(うち利息分は375万3376円)

(知るぽると『しっかりシミュレーション 借入返済額シミュレーション』で計算)

6年経った後の借り換えでも543万円-375万円=約168万円の差額は出ます。ただ、すぐに借り換えていれば543万円-261万円=約282万円となり、借り換えの諸費用を約70万円差し引いても210万円ほど手元に残ったのです。借り換えが遅くなったため100万くらいしか浮きません。

ここでは例として単純な数字でお伝えしていますが、これが金利と残債と時間のもたらすインパクトなのです。

また、それだけではありません。上記の例の設定で続けますと、月々の返済が8万4770円-7万5374円=9396円少なくなります。約1万円として、その毎月1万円を6年間積み立てて、運用益非課税のつみたてNISAで年利3%の複利運用をしたとすれば、72万円の元本は約78万円になります。

借り換えで浮いた返済額を利用して運用していたら、6年で約6万円増えていたのです。つみたてNISAでは、必ず3%で運用できる保証はありませんが、住宅ローンの借り換えで浮いたお金に対して、より金利の高い運用ができればその分得をしていたのです。

孝之さんの「借り換えしなければならないほど、お金に困っているのか?」という言葉にあえて回答するならば、「お金に困っていなくても、借り換えをすることでもっと有利にお金を浮かせられて、教育費やひいては老後資金に早く余裕を持たせられた」ということになります。困っていなくても、より有利になるように早く動くことが大切です。