国民生活センターが定期的に発行している「国民生活」の2022年5月号において、「暗号資産の最新動向」という特集が組まれています。暗号資産の法的基礎知識、暗号資産に関する消費者トラブル、暗号資産のしくみと相談対応に必要なポイントという3項目で構成されていますが、なかでも注目したいのは、やはり暗号資産に関する消費者トラブルの項目です。

年々増える投資詐欺などの利殖勧誘事犯

いささか旧聞に属する話で恐縮ですが、この4月に警察庁が毎年集計している「令和3年における生活経済事犯の検挙状況等について」が公表されました。投資など利殖に関連した詐欺事件、ヤミ金融に関連した事件、訪問販売や通信販売などの特定商取引に関連した事件の実例と共に、検挙された人員や被害額などの推移が記載されています。警察庁のホームページから誰でも簡単に閲覧できるので、是非一度、目を通されることをお勧めします。詐欺は意外と身近なところにあるものです。

なかでも注目されるのが「利殖勧誘事犯」です。これは未公開株式や公社債、ファンド、デリバティブ、預かり金など、要は「この商品に投資すれば儲かりますよ」という謳い文句でお金を集める詐欺事件を指しています。暗号資産に関連した詐欺事件も、この中に含まれています。

昨年1年間を通じて、利殖勧誘事犯の検挙事件数は過去10年中で最も多くなりました。被害額は1110億1857万円で、被害者数は13万2120人です。なかでも被害額、被害者数ともに最多なのが「集団投資スキーム(ファンド)」で、被害額が910億4409万円、被害者数は12万8393人と、利殖勧誘事犯の大半を占めたといっても過言ではありません。

集団投資スキーム(ファンド)とは、出資者から集めたお金を有価証券、事業などに投資・運用した結果、生じる利益を配分するという仕組みのことで、その多くが「元本確保」と「高利回り」を謳い文句にして商材を販売し、集めたお金を詐取するというものです。

また、利殖勧誘事犯に関する相談受理件数も急激に伸びています。前年(2020年)の相談件数が1806件で、2021年の今回調査分は3109件でした。