批判も受けた社会起業家への寄付活動。金融機関の本業と考え創業時から継続

コモンズ投信のこれまでの運用会社にはない取り組みには、社会の課題を解決するために立ち上がる社会起業家を応援、寄付を行う「コモンズSEEDCap」があります。コモンズ30ファンドからコモンズ投信が収入として得た信託報酬の1%相当を寄付するというものです。

金融業の本来の生業は、社会の必要としてところにお金をまわしていくことであるはずです。投資信託を通じて、頑張っている企業に長期投資をすることで経済や社会が豊かになります。しかし、社会課題には国や自治体、企業の活動でも届かない分野があります。わたしたちは、こうした社会課題に取り組む社会起業家を応援、寄付をさせていただくことで少しでも社会を豊かにしたい、これも金融機関の本業の一つだと思って創業時より取り組んでいます。

実は開始当初はかなり風当りが強かったのも事実です。「寄付をする余裕があるなら信託報酬を下げろ」、「赤字会社なのに何をやっているんだ」という声も方々から飛んできました。数年後、ある会合で日本オラクルの初代代表として同社の立ち上げに貢献されたアレン・マイナーさんから、「米国の企業や経営者が寄付に取り組む事例を多く見てきたが、黒字になったから寄付をするのでは駄目。創業時の赤字の時から寄付をするからこそ社内に寄付文化が育つ」と言われたことが、私自身に勇気を与えてくれました。

また、コモンズ30ファンドに投資して下さっているお仲間のなかでも、特に女性の方を中心に、「コモンズSEEDCap」への関心度は高く、「運用成績はそこそこで結構なので、それよりも寄付活動をしっかり行って下さい」という意見をいただくことも少なくありません。

「コモンズSEEDCap」の寄付先は、毎年10月に開催している「コモンズ社会起業家フォーラム」において、寄付先候補のスピーカー11名がそれぞれマイク1本で7分間のスピーチを行い、毎年1人を応援先として選ぶのです。選考は、過去のフォーラムの登壇者を含めた中から最終候補者を3名選び、外部からも招いた委員で構成する選考委員会が、1人の応援先を決めていきます。2022年は選考プロセスを変え、社会起業家を応援する取り組みを進化させる予定です。

この取り組みを続けていくにあたり、徐々に面白い現象が見られるようになりました。このフォーラムを通じて知った社会起業家のNPOやNGOに、個人的に毎月寄付する人が現れたり、その団体で働いたりしている人が出てきたのです。コモンズ投信で毎月ファンドの積み立て、そしてNPOにも毎月寄付で心の積み立てなど、そんな取り組みをされる方が増えているのです。こうした現象を目の当たりにして、日本にも徐々に寄付文化が根付いてきたことを実感しています。