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1998年に近畿弁護士会連合会が4月15日を「よい(4)ゆい(1)ご(5)ん」(よい遺言)と語呂合わせをして「遺言の日」と制定した。2007年からは日本弁護士連合会(日弁連)が全国規模で主催し、記念行事も開催する。遺言相続について、各地で弁護士会による無料法律相談会が実施されている。

“争族”ともなり得る悲劇を防ぐカギは遺言書

知人の子供で、弟思いの優しい姉と姉思いの優秀な弟がいた。母親が亡くなった後、比較的近くにいた姉が父親を何くれとなく面倒を見る。ところが、父親の遺言書には、弟に家屋を譲るとしかなかった。金融資産はあまりなかったようで、家屋が相続財産の大半だった。あるいは遺言書がかなり前に作成されたものだったかもしれないが、当然のことながら、2人は仲たがいし30年近くたっても元の状態には戻っていないそうだ。

かなりの不動産を持っているにもかかわらず、遺言書はもとより相続対策をしていなかったために、想像以上に物件を売却せざるを得なくなり、落胆のあまり体を壊す家族も見てきた。

残された家族が相続問題で争ったり困窮したりしないよう、遺言書を作成しておくことは避けられない。元会社員の方で、夫妻で旅行をするときには、必ず遺言書を書斎の机の上に置いていく人がいる。用意周到といえよう。

しかし、親の方から自主的に作成するなら問題はないが、子供の方から作成を依頼するのは、心情的には辛いだろう。一方、子供サイドから見ても、親の財産状況を知らない人は多い。2019年に明治安田総合研究所が、配偶者のいる55~79歳の男女5225人を対象に、親の金融資産である預貯金の状況をどの程度把握しているかを調査した。年齢が高くなるにしたがって把握している比率は増加するものの、把握している人は50歳後半で男性が37.6%、女性は40.1%と、ともに半数にも及ばない状況だった。

これでは、相続対策どころではない。親との会話の場で、相続問題で仕事が手に付かなくなった同僚がいるという話でもしながら、預金がどの銀行にあるかを聞き出すだけでも、親の意識が変わり、遺言書へとつながる可能性もある。人生は待っているだけでは何も始まらない。親への気配りを忘れることなく、少しずつでも前進させたいものだ。