遺言書の意義と種類・内容の確認
相続財産を配偶者など家族でいかに分割して相続するかは、被相続人である故人の意思に従うことになる。故人の意思が表示された遺言書があれば、これに従うことになるが、ない場合には相続人の間で遺産分割の協議をする。ただ、故人の生存中に介護に携わった人は、その貢献度を考慮してほしいだろうし、生活費補助などの特別受益に浴した人は少なめの相続を促される可能性もある。こうしたことにも配慮しないと、いわゆる“争族”問題になってしまい、長期間にわたり仲たがいすることも多い。
このようなことが発生しないように、遺言書の作成は欠かせない。その遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がある。
まず自筆証書遺言は、氏名や日付などを自筆で書くことが要求されるが、内容・書式に不備があると無効になる。開封する場合には家庭裁判所で「検認」手続きをする必要があり、作成が容易であるものの課題が多かった。しかし、2020年7月に開始した「自筆証書遺言書保管制度」により利便性が高まった。作成した自筆証書遺言を法務局に届け保管してもらうことが可能となり、紛失する心配もなくなった。保管手数料は1通3900円で、遺言者が死亡後も50年間保管される。形式的な不備がある場合も保管手続きの際に法務局の担当者が確認するので安心だ。あわせ、自筆証書遺言は自筆で記載することが必須だが、財産目録についてはパソコンで作成することも可能となるなど、随分と取り組みやすくなった。
次に公正証書遺言は、遺言者の知人など証人2人が立ち会いのもと公証人が作成するもので、保管の必要もなければ紛失の恐れもない。手数料は、財産額などに基づいて数万円以上の金額となる。
自筆証書遺言は家族構成がシンプルで財産が自宅や預金だけの場合、あるいは書き直す可能性のあるときには適しているといえる。一方、家族構成や財産が複雑な場合には公正証書遺言が安心だ。