DCマーケットを知る ─加入者として意識しておかなければならないこと─
私が経験した当時の状況と今の状況を安易に比較することはできませんが、当時を振り返って思う事は、やはりDCを運用するのは加入者本人であり、加入者本人が運用の本質をしっかりと押さえていなければいけないという事に尽きると思います。
DCは確定拠出年金法を根拠とした私的年金制度であり、それは当時と今も変わっていません。しかし法の内容は大きく変わっています。年金づくりを個人自らの責任で運用して行う事をより推進していますし、今運用している加入者の皆さんは、当時と比べてより運用がしやすくなっています。
リーマン・ショック当時、適格退職年金の廃止に伴う移行期間の中で、DCが金融不安の受け皿となった事は事実です。しかし今現在運用している加入者、特に企業型DCを運用する40代加入者の全国的な運用状況を見てみると、驚くことにいまだに元本確保型商品ウェイトが非常に高くなっており、当時のポートフォリオを現在に至るまでそのまま放置してしまっている方が大勢いらっしゃいます。事業主は今、その方々のDC運用に対する意識改善に苦労していますし、企業型DC業界全体の課題となっています。
今回リーマン・ショック当時の状況を例に挙げましたが、日本においてDCが施行されて以降、たくさんの出来事がありました。そして今、長引く感染症の拡大や一方的な軍事侵攻の長期化など、世界経済を不安定にする懸念要素が皆さんの身近な場所にあります。ただ、こうした外的要因がある中で、皆さんは DC加入者として運用の基本と目的をしっかり理解できていれば、こうした外的要因の発生=運用は損をする・損をしたくないからそのままにしておく(根拠なく放置する)という行動が、皆さん自身にとって良い結果を生まない事を、企業や他人に言われたからではなく、ご自身で感じていただけると思いますし、それを感じる事ができれば、自然とご自身に最適な運用行動を行えるようになるはずです。
加入者の皆さんの中で、長らくご自身の運用状況を確認していないという方がもしいらっしゃいましたら、良い機会ですので是非確認をされてはいかがでしょう。皆さんが素晴らしい新年度スタートが切れる事を願っております。