弱気相場はポートフォリオの利回り改善チャンスに

でも、物は考えようで、確かに株価を追いかけて投資をしてきた投資家にとって、この下げは非常にきついもののように感じると思いますが、配当利回りをベースにして長期投資を行うスタイルの投資家にとっては、大きなチャンスともいえます。なぜなら、株価が大きく下げている局面こそ、金融資産のポートフォリオの利回りを改善するチャンスだからです。

たとえば株価が40ドルで、年間配当金が2ドルの株式があるとします。この銘柄の配当利回りは年5%です。その株価が25ドルまで下落し、かつ年間配当金が変わらなければ、配当利回りは8%に上昇します。仮に配当金を再投資しなかったとしても、配当利回りが年8%なら、その銘柄を約13年間保有すれば投資元本を回収できます。つまり、そこから先は株価がどれだけ下げたとしても、当初の投資元本には損失が生じなくなるのです。

ただし、この手の投資を行うためには、減配になりにくい銘柄を探す必要があります。米国株式の場合、①S&P500の構成銘柄、②時価総額が30億ドル以上、③1日の平均取引額が500万ドル以上、④25年以上連続増配、という条件を満たしている銘柄のことを「配当貴族銘柄」と称しています。つまり、長期間にわたって増配を続けていて、株式市場での取引が活発に行われている大企業のことです。この手の銘柄を中心に投資対象を探すのです。

たとえばIBM。2012年の平均株価は196ドルで、年間配当額は3.3ドルでした。配当利回りは年1.68%です。これが2021年中の年間配当金額は6.6ドルまで増えています。この9年間で配当金額が倍になったのですが、2月18日現在の株価は124ドルまで下落しています。仮に今後も6.6ドルの配当金額が得られるとして、IBM株を124ドルで買うことが出来れば、今後、年5.32%の配当利回りが継続的に得られることになります。

しかも、この20年間を見ると、配当金の額は2001年が0.6ドルで、2021年が6.6ドルですから、年平均0.3ドルのペースで配当金額が増えています。このペースが続けば、10年後には今よりも3ドル、配当金額が増えて、9.6ドルになる可能性も考えられます。年間配当金の額が9.6ドルの銘柄を、124ドルの株価で購入できたとしたら、10年後の配当利回りは年7.74%まで向上します。