土地(不動産)に価値を見出す感覚は日本人にはなじみやすい
江戸時代に入り、土地は「将軍様のもの」になったが、様々な抜け道があり、武士同士で土地をトレードすることもあったようだ。さらに、時代が下るにつれて武士の力も弱くなり、やがては武士が手放した土地を商人が購入するようになる。江戸の長屋などは不動産経営の先駆けといえるだろう。
明治維新が起こり、江戸城明け渡しが行われると、武家屋敷は次々と没収され、管用地や私有地に転換されていった。明治時代の半ばには初の不動産事業者「東京建物」が設立され、不動産はビジネスとして注目され始める。
明治、大正と宅地開発などで不動産業は伸びていく。第二次世界大戦後は一時的に悪質な業者が増えたが、法整備などもあり、高度経済成長を経て少しずつ不動産投資が一般人に拡がっていく。バブル景気の頃には普通のサラリーマンも不動産投資をするようになる。土地や建物からの収益に期待するという感覚は、日本人にはなじみやすかったのではないだろうか。
2000年には、アメリカでは1960年代から存在していた「REIT(不動産投資信託)」を解禁する法律が日本にも登場。投資信託という形で小口から不動産に出資することも可能になった。翌年には東証にJ-REIT市場が開設され、その後、銘柄数を着実に伸ばしていく。投資には保守的といわれている日本人だが、REITの時価総額は約17兆円(2021年12月末現在)、アメリカに次いで日本が世界第2位だ。
『鎌倉殿』の時代から続く、日本人と土地の関係。利益を生む土地を重視し、そこから挙がるリターンに期待する感覚は、中世から連綿と続く極めてシンプルなものなのかもしれない。