振替加算は年齢の高い人ほど多くもらえ、やがてゼロに…

振替加算の支給額は、1986(昭和61)年の法改正施行日で59歳以上(1946〈昭和21〉年4月1日以前の生まれ)の人については、配偶者加給年金額と同額の224,700円※2 となっています。最も支給額の少ない1961(昭和36)年4月2日~1966(昭和41)年4月1日生まれの人は15,055円※2となり、年齢が若くなるごとに受給金額が減額されていきます。また、1966(昭和41)年4月2日以後生まれの人はゼロ、つまり振替加算はないと決められています。生年月日によって振替加算が受け取れなくなってしまうのはなぜでしょうか?

※2 2021年度額

ここで年金の歴史を振り返ってみましょう。1986(昭和61)年の大改正で基礎年金制度が導入され、それまで働き方などでバラバラだったタテ割りの制度体系が整えられ、「1人に1つの基礎年金」制度が確立し、基礎部分は全国民共通の基礎年金に一元化されました。この大改正の際に、国民年金はその名のとおり全国民が加入する年金制度となりました。

国民年金は原則20歳から60歳までの40年間すべての期間において保険料を納めることで満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。改正前の制度では自営業者や農業者などは国民年金に加入、会社員や公務員などは被用者保険に加入していました。被用者保険の配偶者については「夫が外で働き、妻が家庭を守るべきである」という考え方が一般的であった時代で世帯単位の給付設計がとられていました。

当時、厚生年金保険など被用者保険加入者の配偶者は国民年金の適用除外とされていたため希望する人のみが任意加入できる制度となっていました。改正後は国民年金の適用が被用者保険の配偶者にも拡大し国民年金の第3号被保険者※3となっています。

※3 国民年金の詳細は第1回『受給できるのは女性だけ!? 遺族厚生年金「中高齢寡婦加算」とは』内『そもそも公的年金とは』をご参照ください。

ここで法改正前後の年齢の違いにより、基礎年金の受給金額にどのような差異が生じるのかを考えてみます。国民年金第3号被保険者の人で、前段の施行日前にすでに20歳になっている人を例にとってみましょう。この人については任意加入していなければ、60歳までの40年の加入期間を満たすことができず、基礎年金を満額受給することができません。特に施行日に60歳に近い人ほど任意加入期間が短い、もしくは加入期間がまったくない人が多くなるという問題がありました。こうした、低額の老齢基礎年金しか受け取ることができない人を考慮した結果、振替加算という制度があるのです。一種の救済措置とも言えます。歴史的背景が理解できると加算があることに納得できるかと思います。

言い換えると1966(昭和41)年4月2日以降生まれの人については、基礎年金の制度が整ってから20歳を迎えることができるので、国民年金に40年加入することができます。そのため、満額の老齢基礎年金を受け取ることができ、振替加算は必要ないこととなります。