ひたすら貯め込み預金残高は1800万円に

子どもの頃から臆病で心配性だったのですが、絶対大丈夫と言われた大学受験で失敗し、就活もうまくいかなかったことで、ネガティブな性格に拍車がかかりました。人生は何が起こるか分からない。中には、リーマン・ショックのように自分の力ではどうにもできないこともあります。いざというときにお金がないと何もできなくなりますから、入社してから10年、ひたすらお金を貯めることだけを考えてきました。

大学時代から下宿する家賃5万円のアパートに住み続け、食費を浮かすために毎日会社にはお弁当を持参し、必要のない支出は極力しないよう心掛けました。お酒が飲めないことを口実に飲み会はほとんどパスし、会社には制服があるので洋服を買うのもせいぜい年に1~2回、それもファストファッションばかりです。

唯一お金をかけていたのが生命保険です。30歳を過ぎて周囲の女友達は次々結婚しましたが、私は女性ばかりの職場で出会いもなく、一生シングルかもという不安がありました。万一大きな病気やけがをしたり、職を失ったりしたら、それなりの保障が必要です。そこで、アカウント型保険と医療保険、さらにがん家系なのでがん保険にも加入し、毎月の保険料はゆうに2万円を超えていました。

それでも毎月の給料から25%以上、ボーナスは全額を貯蓄に回し、気が付けば銀行預金の残高は1800万円になりました。今思えばおかしな話ですが、当時の私にとっては、銀行預金の数字こそが、これまで挫折ばかりしてきた私が唯一残した“成果”だったのです。

会社の先輩から誘われてワンルームマンション投資のセミナーに参加したのは、そんなときのことでした。「金利が低い今のうちがチャンスなのよ。他の子たちに話しても絶対理解できないと思うけれど、あなたならきっとその価値が分かるはずだから」――そんな先輩の言葉に、少しばかり優越感を覚えたのも確かです。

●ある出会いが中村さんの運命を変え… 後編へ続く>>