夏の参院選後に議論が再燃する可能性

「成長と分配の好循環」や「新しい資本主義」を掲げる岸田首相。2021年9月の自民党総裁選では、成長と分配の好循環に向けて金融所得課税の見直しなど「1億円の壁」の打破を政策に掲げ訴えた。だが、日経平均株価は、2021年9月27日から8営業日連続で下落した。下げ幅は2700円を超えるなど1週間超で約3000円近くも下がった。

東南アジアでの新型コロナ感染症拡大の影響で、半導体などの部品不足が響き、世界でインフレ懸念が加速する株式市場だったとはいえ、岸田首相の掲げた金融所得課税の強化に関する発言が株価の下落につながったとの見方も強い。

金融市場からも慎重に検討すべきだといった懸念や反発の声が高まった。そうした反応をうけて首相に就任した10月直後に金融所得課税の見直しについて先送りを表明することとなった経緯がある。今年は夏に参院選を控えているため、無事選挙を通過してから所得再分配に向けて本格的に議論される可能性がある。先送りされたとはいえ、安心して見守るわけにもいかず富裕層の警戒は続く。

金融所得課税強化の議論は、投資家心理を悪化させ、株価の低迷にもつながりやすい。「寅千里を走る」との格言から2022年の株式相場の飛躍が期待されがちだが、これは虎が1日で千里を走ってさらに戻ってくることができるほど勢いがあることのたとえだ。2022年は始まったばかり。「往って来い」で元に戻らないよう、株式市場の上昇を期待したい。

執筆/招福亭たぬき
金融、経済ライター。マクロ経済や金融全般の執筆に定評がある。仕事を通じ金融の面白さに気づき、日々勉強中。最近ではつみたてNISAやiDeCoなど自身の資産形成にも関心を広げている。将来、活動の軸をYouTubeやInstagramに移し、いつかFIREを実現したい…と夢見る