なぜ2段階に調整(支給停止)されるのか?
高年齢雇用継続給付は1994(平成6)年の雇用保険法改正により創設されました。高齢化が進む中で、働く意欲と能力のある高年齢者について、60歳から65歳までの雇用継続を援助・促進することを目的としています。
急速な高齢化や女性の社会進出など、日本の雇用を取り巻く諸情勢は大きく変わることが予想され、整備充実を図るための雇用継続給付の1つが高年齢雇用継続給付の創設の経緯となります。
60歳以降、特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)の支給を受けている人が、同時に高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金)の支給を受ける場合、雇用保険も年金も社会保障給付のため、この両方を何の調整も行わずに給付すると重複してしまいます。そのため調整(支給停止)が行われることとなります。
ただし、高年齢雇用継続給付は下がった所得をカバーするものであるため、在職老齢年金よりは支給停止の割合が少し緩やか※3になっています。
※3 在職老齢年金は、基準を超えた賃金の5割の年金が支給停止となるのに対し、高年齢雇用継続給付金を受給する場合は、その4割の年金が支給停止となります。
支給停止額を計算してみよう
具体的な数字で見ていただくと理解が深まると思います。60 歳到達時の賃金月額※4が40万円の人をモデルとして、計算してみましょう。
【高年齢雇用継続給付の計算】
60 歳到達時の賃金月額※4が40万円。賃金が60歳を境に24万円に下がるとするとと……
低下率は 60%(240,000÷400,000×100)< 75%なので、
240,000×15%=36,000 円が高年齢雇用継続給付金として支給されます。
※4 60歳到達時の賃金月額には上限額と下限額があり、支給額にも支給限度額と最低限度額があります。
【年金の支給停止額の計算】
この方が特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)を受け取ると……
①老齢厚生年金が10万円(基本月額)、賃金が 24 万円(総報酬月額相当額)の場合の在職老齢年金による支給停止額
(10万円+24万円-28万円)÷2=3万円
②高年齢雇用継続給付を受けることによる年金の支給停止額
24万円×6%=14,400円
よって、老齢厚生年金は2段階の調整により月額44,400円(①+②)が支給停止されます。なかなかの金額だと感じる方も多いでしょう。