さらなる成長の一手としてフィービジネスへの挑戦も

このように、IFAビジネスを原動力に急成長を遂げたあかつき証券だが、「5年後には会社全体として預り資産1兆円を目指したい」と工藤氏は意気込む。「IFAビジネスがこのまま順調に育っていけば、8000億円程度までは十分に達成できるという手応えはあります。ただし、これを1兆円にまで伸ばしていくためには、新たなチャレンジも必要になってくるでしょう」。

そのチャレンジの1つが「残高連動型のフィー体系の仕組み」であり、来年前半の導入に向けて準備を進めているところだという。いわゆるフィービジネスを標榜するIFAは少なくないが、顧客の資産残高全体にフィーを課金している会社はほとんどない。しかし、IFAビジネスを先導していくためには、そのインフラを先に整えることが不可欠だという考え方なわけだ。

さらにIFA以外との連携も進めていて、「大手証券会社などが地方銀行などとの連携を強化していますが、当社でも信用金庫を中心に、すでに6社の地域金融機関と提携しています」と工藤氏。「先日、ある信用金庫の方から話を聞くと、『他の証券会社は案件が出てくるまで待っているだけで、何の提案もしてこない』とのこと。その点、当社は銀行紹介担当チームが支店を全て訪問し、セミナーの開催やパンフレットの作成、さらには営業員の方の研修も行うなど、積極的に動いている点をご評価いただいています。また、証券会社のお客さまと地域金融機関のお客さまは異なりますから、なるべくリスクの少ないものをご提案するなど、状況に応じたきめ細かい対応を行ってきたことが、結果的に成果につながっているようです」。

あくまでも攻めの姿勢を崩さない工藤氏だが、一方で、「以前であれば相続が発生しても、お子さまやお孫さまが口座をつくって資産を引き継いでくれていましたが、今ではその多くがオンライン証券に流れてしまっています」と現在の危機感を語る。「だからこそ、お客さまのご要望は何なのか? どうすれば取引を継続していただけるのか? 常にお客さまの多様なニーズを把握しながら、経営基盤を盤石にしていくことが私に課せられた使命だと感じています。私が経営を引き継いだときは、営業収益で日本の証券会社の40番目ぐらいの会社でしたが、現在は20番目程度となっています。5年後に預り資産が1兆円になったときには、営業収益でトップ10に入る会社にまで成長させたい。それが現在の最大の目標と言えるでしょう」。

工藤氏の綿密な戦略のもと、急成長を遂げてきたあかつき証券。今後のIFAチャネル全体の拡大とともに、その存在感はさらに増していくに違いない。