近年、委託契約を希望するIFAが増加の一途をたどり、それと歩調を合わせるように増収を続けているあかつき証券。大手証券会社の出身で、多くの富裕層を抱えるIFAからも、同社の商品ラインアップとサポート体制を高く評価する声がしばしば聞こえてくるという。

「昨年度の収益に関しても、約120億円のうち90億円ほどがIFAビジネスによるものでした。前年同期との比較でも4.7倍の増加で、今やIFAビジネスこそが当社の中核事業と言えるでしょう」。そう語るのが、同社の代表取締役社長を務める工藤英人氏だ。

工藤 英人 氏

「IFAの生の声」に耳を傾け、きめ細かいサポートを実現

2012年に社長に就任した工藤氏だが、そのころの社内の雰囲気は、「正直言って、沈みゆく船のように暗いものでした」と振り返る。リストラなどで収益は改善したものの、そもそも預り資産を増やす努力をしなければ将来がない。そうした中で注目したのが、IFAビジネスの可能性だったというわけだ。

「もともと当社は株式に強い証券会社だったのですが、その手法はすでに陳腐化していると感じたのも事実です。ちょうど『ほけんの窓口』のような来店型保険ショップが台頭していた時期で、お客さま目線の代理店ビジネスに高い可能性を感じていました。そこで保険業界や米国の独立系アドバイザーなどを研究した結果、中立的な立場からお客さまにアドバイスする『IFAによる販売モデル』に取り組もうと決意したのです」(工藤氏)。

日本におけるIFAの認知度はまだ低かったものの、2014年に参入。工藤氏を含む数名の体制でスタートし、全国津々浦々のIFAを訪問するも、4年ほどはほとんど進展がなかったという。しかし、2018年ごろには大手証券会社から独立し、IFAに転身する人が増加。同社のIFAビジネスも、それまでの地道な営業努力が口コミで広がってきたことで一気に拡大していった。

「その最大の原動力は、きめ細かいサポート力にこそある」と工藤氏は強調する。それを支えているのが、IFAに対応する約40名の営業スタッフ。同社では、リテール営業の担当者の中から、30歳前後の若手を中心にセレクションし、IFA向けの営業担当に起用している。「最近のIFAは証券会社などで実績を積んでこられた方が中心であり、平均年齢は30歳くらいでしょうか。だからこそ、リテール部門で営業を経験した人材であれば、IFAの皆さまの悩みや困っていることを自分事として理解できますし、同年代のスタッフのほうが気軽に相談しやすいと考えたのです」。

また、IFAをサポートするに当たって、最も重視しているのはその「生の声」だという。「例えば、口座開設ひとつとっても、他社はシステム頼みでほとんどフォローしてくれず、『せっかく独立したのにスタートから躓いてしまう』といった声が聞こえてきました。そこで当社では、営業スタッフが口座開設にまで同行するというきめ細かいフォローを徹底しました。最近はコロナ禍の影響で減ってしまったものの、以前は契約していただいたIFAの皆さまとは必ず会食し、さまざまな要望を伺ってきました。食事をともにしながら話すと、本当にサポートしてもらいたいことの『本音』が伝わってくるのです」。

仕組債の提供に力を入れているのも、あくまでIFAからの要望を吸い上げた結果だと工藤氏は続ける。「大手証券会社出身のIFAの方から、『独立後も仕組債を販売したいのだが、前職同様のレベルでサービスしてほしい』とリクエストされることがたびたびありました。中でもインディケーション(価格提示)をすぐにしてほしいという要望が最も多かったため、当社ではオーダーをいただいた当日中に結果をお伝えするようにしたのです。他の証券会社では3日程度かかるところが多い中、翌日に約定できるという点はおかげさまで評判を呼びました。もっとも、営業スタッフからすると苦労の連続だったとは思います」。

また、同社が仕組債を提供することは、IFAばかりか顧客のメリットにもつながっている。これまでは大手証券会社の独占状態だったが、競争が生まれたことで合理的なプライシングで提供できるようになったというわけだ。

「仕組債ならあかつき証券」という評判は日に日に高まり、1日に数百件もの仕組債のオーダーがあることも珍しくなくなっていく。この全てに手作業で対応することに限界を感じた同社では、今年2月に「FLASH ANSWER PRO」という仕組債の自動インディケーションシステムを開発・導入。その結果、現在では毎日1万件以上のインディケーションの依頼があるものの、IFAは数秒で情報を取得できるようになった。

このようにIFAに徹底的に寄り添い、その要望に応えているからこそ、所属IFAも右肩上がりに増えている。「現在は約1000名のIFAを、5年後には4000名程度にまで伸ばすことを目標にしています」と工藤氏は話す。