要介護の人の56%が生活援助を利用

介護は高齢者施設で行う施設介護と、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問して行う訪問介護があります。この訪問介護には、食事・排泄・入浴などの介護を行う「身体介護」と、掃除・選択・買い物・調理などの生活支援を行う「生活援助」があります。通院などを目的とした乗車や移送・車の乗り降りの介助を行うところもあります。

令和3年4月審査分の訪問介護受給者の訪問介護内容種類別に利用割合を見たところ、要介護1の人は生活援助を56.2%の人が利用しており、身体介護は33.0%でした。これは、適度な生活援助があれば、ある程度自立した生活ができるとも読み取れます。要介護度が進むほど生活援助の利用率は減少していき、反対に身体介護の利用率が増していきます。

図2.要介護状態区分別にみた訪問介護内容類型別受給者数の利用割合

 

注:訪問介護内容類型別受給者数の利用割合(%) = 内容類型別の受給者数/訪問介護受給者数×100
1)「身体介護・生活援助」とは、身体介護に引き続き生活援助を行った場合をいう。


これは訪問介護利用者に絞ったデータなので、基本的に施設入居者ではありません。近年では高齢者施設や病院等に即入居というよりも、利用者にとって可能な限り住み慣れた自宅で自立した生活を継続できるようにサポートするという流れとなっています。

図3.要介護(要支援)状況別区分にみた年間継続受給者数の変化別割合

 

図3は、要介護・要支援状態にあって1年間継続して介護(予防)サービスを受給した人の要介護(要支援)認定が、1年後にどれだけ変化しているかを示しています。どの区分の人も80%以上は1年後も同じ区分が続いていますが、要支援・要介護度が低い人ほど、1年以内に重度化して上の区分に移動していることがわかります。

軽度化している人もいるものの、重度化する人の方がはるかに多いところを見ると、症状を重度化させずに維持をすることの大切さが分かります。
 

まとめ

人生100年時代といいますが、高齢になるほど、公的介護保険を利用した介護予防・介護サービスの利用者が増えていきます。長生き傾向のある女性ほど高齢期の利用者数が増していき、男性でも長生きするほどその利用率は高まっていきます。

高齢化が進む世の中では、介護予防・介護サービスを利用する人の割合が右肩上がりに増えています。受給者一人当たりの受給額も年々増加傾向にあります。そんな中で制度を維持していくためには、一人ひとりがなるべく重症化しないで、暮らしを維持していくことが欠かせません。また、要支援・要介護状態になった後もなるべく自宅で自立した生活を維持する方向に今後ますますなっていくでしょう。

高齢の親がいる人や自分自身の老後を考えている人にとっては、早めに公的介護保険制度の中身を理解しておくことが重要です。例えば、高齢の親が離れたところで一人暮らしをしているという場合、離れていると心配なこともあるでしょう。親の介護のために介護離職を検討する前に、例えば今回の調査でも要介護1の人の利用率が高かった訪問介護の「生活援助」などを利用することで、しばらくお互いの生活が維持できる可能性があります。地域包括支援センターや自治体の窓口などに、利用できるサービスはないか早めに相談してみましょう。
 

令和2年度 介護給付費等実態統計の概況
(令和2年5月審査分~令和3年4月審査分)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/20/index.html