金融機関への不信感の払拭が「貯蓄から資産形成へ」に不可欠
2000年、金融庁は「貯蓄から投資へ」というスローガンを打ち出しました。この当時、個人金融資産の総額は、日銀の資金循環統計によると1409兆円で、金融商品別の内訳は以下のようになります。
現金・預金……53.9%
債務証券……3.4%
投資信託……2.4%
株式・出資金……8.6%
保険・年金……26.7%
その他……5.1%
この構造は、その後もほとんど変わりませんでした。そこで金融庁は2016年、「貯蓄から投資へ」というスローガンを「貯蓄から資産形成へ」に変更しました。「投資」という言葉に対して、ある種の誤解があるのではないかということで、「資産形成」という言葉が用いられたのですが、だからといって状況はまだ大きく変わっていません。
直近、2021年6月末時点の資金循環統計を見ると、個人金融資産の総額は1992兆円で、内訳は以下のようになります。
現金・預金……53.8%
債務証券……1.3%
投資信託……4.5%
株式・出資金……10.5%
保険・年金……27.0%
その他……2.8%
わずかながら投資信託や株式・出資金の比率は高まっていますが、それでも現金・預金の比率はほとんど変わらず、です。
しかし一方で、超高齢社会になって年金財政が厳しくなる中、老後の生活レベルを維持するために公的年金だけでは心もとないという人は、自分で資産形成をしなければなりません。その意識づけを広めていく必要もあります。
そのためには、「投資」を「資産形成」に変えるといった程度の言葉遊びではなく、具体的に実効性のある方法で、個人の目を資産形成に向けさせなければなりません。その方法の1つが、金融機関に対する不信感の払拭です。だからこそ「顧客本位の業務運営」が掲げられ、本当の意味で顧客の側を向いて商売をする金融機関のあり方が問われているのです。
【この記事のポイント】
1. 資産運用業だけでなく、広く金融機関に適用される「顧客本位の業務運営」。
2. 情報の非対称性で超過収益を得るのがかつての金融ビジネスでした。
3. 超高齢社会の到来で「貯蓄から資産形成へ」を進めることが不可欠になっています。