そもそも「顧客本位の業務運営」とは何か?
「顧客本位の業務運営」という言葉の語源は、「フィデューシャリー・デューティー」であり、この概念が注目されたのは、金融庁が「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針」の中に盛り込んだのがきっかけです。
この基本方針でどのように記載されていたのかというと、「家計や年金、機関投資家が運用する多額の資産が、それぞれの資金の性格や資産保有者のニーズに即して適切に運用されることが重要である。このため、商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関がその役割・責任(フィデューシャリー・デューティー)を実際に果たすことが求められる」ということでした。
ちなみに、フィデューシャリー・デューティーについては、次のような注釈がつけられています。「他者の信認を得て、一定の任務を遂行すべき者が負っている幅広い様々な役割・責任の総称」。投資信託でいうならば、他者とは受益者、つまりお金を出して投資信託受益証券を購入する人たちを指します。
投資信託は、大勢の受益者からの信認を得て、委託者である投資信託会社が「一定の任務」、つまり託された資金をさまざまな有価証券に投資して運用し、運用成果(リターン)を上げ、それを受益者に公平に分配するという一連の業務に関して責任を負っているというのが、この注釈の意味です。
また、基本方針の「商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関がその役割・責任(フィデューシャリー・デューティー)を実際に果たすことが求められる」という文面をやはり投資信託の範囲で考えると、委託者である投資信託会社のほか、投資信託会社から受益者資産の管理などを受託する受託銀行、そして個人に投資信託を販売し、購入代金や分配金、解約金、償還金の授受を行う窓口となる販売金融機関も含め、それぞれに課せられた役割や責任を果たす義務を負う、という解釈になります。
ちなみにフィデューシャリー・デューティーの対象は前出の投資信託会社をはじめとする資産運用業だけでなく、保険会社や銀行、証券会社、FX会社、商品先物取引会社も含まれています。一度耳にしただけでは分かりにくい「フィデューシャリー・デューティー」を日本流に置き換え、金融庁が原則として公表したのが、「顧客本位の業務運営に関する原則」になります。