個人投資家の情報収集の在り方は変わってきている。次、変わるべきは…?

私は金融機関の研修・セミナー講師として活動し、そろそろ20年となります。

金融機関内部では、よく具体的な販売事例が社内で共有されています。例えば、「このような属性のお客様に、このような提案をした結果、○○ファンドを、○○○万円購入していただいた」というのが代表的でしょうか。他の支店の同じようなお客様にもぜひ同様のアプローチをお願いします、という意味だと思います。

しかし、もうこれからはこのような情報共有はあまり役に立たないような気がします。

私の経験上、日本では数年前から資産運用を行う場合、「お客様が自ら情報を得て分析し、自分で判断し購入する」時代にとっくに突入していると思います。にもかかわらず、そのために役立つ情報があまりにも不足しており、さらには「見える化」がされていないのが現状なのです。

私は現在58歳です。50代後半の男性は、退職を前にして一般的にどのような投資行動を取っているのかについて私は大変興味があります。そこにはきっと大いに参考にすべき、大切な「気づき」があると考えるからです。

「世の中の50代後半の男性は、こういうファンドを選んでいるんだ」
「こんな買い方をしているとは驚いた」
「ファンドのHPの中で、特にこのページを集中的に読んでいるね」
「購入している方は関東エリアより関西エリアの方が多いんだなぁ」
「このファンド、50代後半の保有者が多いということは、この投資信託によって10年先のライフプランを考えているのか……」
などなど。きっと日本の個人投資家が欲しいと考えている情報が山のように埋もれているのではないでしょうか?

上場企業は様々な情報を四半期決算以外にも適宜公開しています。情報開示が進み、ここ10年間で株式投資をする個人投資家の延べ人数も大幅に増えました。

上場企業は約3600社。ファンド数は約6000本。次は間違いなく、投資信託の番だと思います。

ファンドの本数を半減する方向性を維持しながら、膨大な情報の「見える化」をぜひ行っていただきたい……! それが、お客様のためとなり、我が国の資産運用の裾野を拡大し、ひいては投信会社や販売する金融機関のためにもなると考えます。

先述した「さわかみファンド」のHPには頻繁に登場するキーワードがあります。

それは「みなさまのさわかみファンド」です。

多くの投資信託の場合、「みなさまの○○○ファンド」なのにも関わらず、当の「みなさま」は、ほとんど情報を保有していません。

私は「もっと(投資家にとってためになる)情報をください」ということを日々FPとして、現場で感じています。現状は歯がゆくさえありますが、昨今のDXの流れを受けて、投資信託にまつわるデータの在り方が質・量ともに、根本的に変わることを願ってやみません。