コミッションビジネスからフィービジネスへ

オンライン取引をメインとする金融機関は対面営業型の金融機関に比べて、投資信託の販売手数料を無料化する流れに乗りやすいのは事実です。店舗や営業担当者をそろえずに済む分、販売コストを低廉に抑えることが可能だからです。

そして、対面営業を中心とする金融機関にこの流れが浸透するかどうかは、今の段階では何とも言えないところです。しかし、私見を言わせてもらうなら、この流れは対面営業中心の金融機関にも広がらざるを得ないと思います。

それが浸透するにはまだ時間がかかると思われますが、今後、金融リテールにおいてはコミッションビジネスからフィービジネスに移っていく可能性があるからです。

コミッションは売買手数料のことで、取引が行われる都度、取引金額に対する一定割合、あるいは一定金額の手数料が徴収されます。日本の金融ビジネス、とりわけ証券ビジネスは長年にわたり、このビジネスモデルで収益を得てきました。

これに対してフィービジネスは、顧客から預かった金額全体に対して年率数%の手数料を取るというものです。米国では2000年のITバブル崩壊後、資産管理型営業へのシフトが進み、金融ビジネスの収益モデルはコミッションビジネスからフィービジネスへと移行していきました。そして日本も、これからこの流れをキャッチアップすることになりそうです。

ここ数年、投資信託の過度な回転売買が問題視されてきました。なぜ回転売買が行われてきたのかというと、それによって販売金融機関が投資信託の販売手数料をより多く稼げたからです。しかし、これに金融庁が「待った」をかけました。販売手数料の獲得を目的とした回転売買を規制するための監督指針を設けたのです。

金融機関からすれば、コミッションビジネスで収益を稼ぐのが難しくなりました。そうなれば必然的に、フィービジネスに移行せざるを得なくなります。今すぐにというわけにはいかないでしょうが、今後数年をかけて、日本の金融業界はコミッションビジネスからフィービジネスへとビジネスモデルの転換を余儀なくされるでしょう。

そういう時代が到来しようとしている今、投資信託の販売手数料の自由化は当然のことですし、いずれは自由化どころか無料化に向けて進んでいく可能性が高まっています。この流れはオンライン金融機関だけのものではなく、対面営業型の金融機関も決して例外ではないのです。

【この記事のポイント】
1. 投資信託の販売手数料は約款で定められている上限率の範囲内で販売金融機関が自由に設定できます。
2. しかし、競争原理が働かなかったこともあり、かつては販売手数料が横並びでした。
3. 2019年以降は販売手数料の無料化への動きが加速しています。