販売手数料の無料化に踏み切る金融機関が登場

現在、日本国内で販売されている投資信託の販売手数料は自由化されています。具体的には、各ファンドの約款に定められている販売手数料の上限の範囲内で、販売金融機関が自由に料率を決められるのです。そのため、同一ファンドであったとしても、販売金融機関によって販売手数料が異なるというケースが見られるようになりました。

そしてここ数年では、販売手数料を無料化する販売金融機関が徐々に増えてきています。2016年から投資信託の販売を再開した松井証券、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、LINE証券の他、オリックス銀行、ソニー銀行、ジャパンネット銀行といったところが、取り扱っている投資信託の販売手数料の無料化に踏み切りました。

ただし、販売手数料の無料化に踏み切っている金融機関はオンライン取引を行っているところばかりです。対面営業中心の金融機関は、店舗の維持コスト、顧客に対応する営業担当者を雇用・教育するためのコストがかかってくるため、販売手数料の無料化には踏み切れない現実があるのも事実です。

東京きらぼしフィナンシャルグループの証券子会社である「きらぼしライフデザイン証券」が、預かり資産1000万円以上の顧客を対象にして、投資信託の販売手数料を無料にする手数料体系を導入していますが、この手の動きが全ての対面営業型金融機関に広がるかどうかは、まだ何とも言えません。

ところで、こんな疑問が浮かんだ人もいるのではないでしょうか。「投資信託を販売して手数料収入を得ている金融機関が販売手数料を無料化したら、どこで収益を得るのか」ということですが、これは心配には及びません。なぜなら、販売金融機関が投資信託から得ている収入は、販売手数料だけではないからです。

運用管理費用(信託報酬)には投資信託を運用する投資信託会社、ファンドの資産を管理する受託銀行(信託銀行)が受け取る信託報酬部分に加え、販売金融機関が受け取っている「代行手数料部分」が含まれています。何を代行するのかと言えば、購入資金や解約資金、分配金の受け渡しに伴う事務作業、ならびに情報提供サービスなどを、販売金融機関が投資信託会社に成り代わって行うという名目で徴収しているものです。

料率はファンドによって異なりますが、大まかにいえば投資信託会社が受け取っているのとほぼ同率といってよいでしょう。例えば年間の運用管理費用が信託財産に対して2%だとしたら、受託銀行が受け取る分がだいたい0.1%。残りの1.9%を投資信託会社と販売金融機関とで割って、それぞれ年0.95%ずつ受け取るというイメージです。