大切なのは選択肢が増えること。どんな分野にもFPがいる社会になればいい
——今後のFP業界の理想や展望をお聞かせください。
いろいろなタイプのFPが大勢いる社会になればいいなと思っています。
例えば、商品販売をしているFPがいてもいいと思うんです。相談者から見れば、ワンストップで金融商品を買えるのはメリットでもあります。どのFPを選ぶか決めるのはお客様です。大切なのは選択肢を増やすことだと思います。
現状では、メディアに登場するFPは固定化していて、スターのような人にニーズが集中して、FP業界自体の新陳代謝はあまりよくないと感じています。
今後、お客様のリテラシーが向上して、悩みが多様化すれば、さまざまな個性を持ったFPにスポットライトが当たるようになるのではないでしょうか。そのためには、FPを業として行う人がまだまだ少ないと感じます。プロのFPは、ご相談者の人生に責任を持つという覚悟を持たなければなりません。私は日本FP協会でプロフェッショナルFP研修という実務家FP育成のプログラムを担当していますが、このような草の根の活動も必要ですね。
いまだに、FP相談にお客様はお金を払うのか、FPビジネスは成り立つのかといった質問をされることがあります。しかし日本人の考え方は間違いなく変わりつつあります。自分にとって価値のある物にお金を支払うという考えが根付いてきたのではないでしょうか。例えば、身体を鍛える目的でジムに行きますよね。さらにトレーナーにアドバイスを求め、なりたい自分に近づくためにお金を支払うことは当たり前になっています。
同様にお金に関してもなりたい自分に近づくためにプロのアドバイスを求めるという人が増えてきているので、FPも自分を選んでもらえるよう、自身の能力開示をし、個性を強くアピールする必要があります。ニッチな分野で活躍するFPが増えて、どんな悩みにも相談先の候補としてFPがあがる。FPの点が集まり、面で人々を支えることができるような社会になっていけば良いなと思います。
現場に立つFP同士による相談事例の共有やSNS上のプラットフォームでのやり取りといった山中塾の取り組みは、互いを高め合う切磋琢磨であり、同時に“互助”的でもあり、FPの質向上のための1つのモデルとして大きな意義を持っているのではないでしょうか。
また、「スターのような人にニーズが集中して、FP業界自体の新陳代謝はあまりよくない」という指摘はFP業界の現状を映す言葉として非常に印象的です。
多様なFPがいて、生活者にとって相談先の選択肢が増えることは、「お金の相談が真に根付く」こと、ひいてはより豊かで成熟した社会になるのに欠かせないステップでしょう。「日本人の考え方は変わってきている」という変化の兆しは喜ばしいとともに、お金に真剣に向き合う人が増え、千差万別ともいえる多様な悩みが“顕在化”すること=需要が生まれることが、ますます欠かせないのではないでしょうか。
取材・文/笠木渉太(ペロンパワークス)