山中塾は同じ志を持ったFPが互いに高め合う場所
——山中塾を運営されたきっかけは何だったのですか?
相談者が増えていくにつれて、自分のキャパオーバーを感じました。たくさんの方に頼って頂けるのはうれしいことですが、だからといって一人ひとりの対応の質を下げたくはない。もちろん助けを求めている方を見捨てるようなこともしたくない。そう思うなかでお客様に対して、悩みを解決できる力を持ったFPが足りていないのではないかと思ったのがきっかけです。
だからといって、私の分身を作ろうと思ったわけではありませんでした。私を選んできてくれる相談者もいますが、お話しするなかで、私と合わないかもと感じる人もいます。
FPの数が増えれば、それだけお客様にとっても最適なFPが見つかりやすくなるはず。FP自身の個性を大事に育ててあげたいと思っていました。
当初は私の最も得意とする分野、確定拠出年金に関連する知識を私が教える場として設けた山中塾だったのですが、参加者それぞれの個性を尊重しようと考えているうち、いつの間にか参加者が主体的に相談事例や課題を持ってくるようになって、私が教える機会は減りました。今では少し寂しいくらいです(笑)。
——山中さんが直接教える機会が少なくなったということですが、そうなった今でも、必ず伝えていることはありますか?
「お客様の本当の利益のために学び続けよう」という志は必ず共有しています。
相談に来られる方は立場も家庭環境もさまざま。お金の悩みには誰にでも当てはまる一つの正解があるのではなく、FPは都度、それぞれの方に適したアドバイスをしなくてはいけません。
アドバイザーとしての方針が毎回ブレてしまったら、相談者も不安になると思うんです。また一人きりで業務を行うことが多いFPの場合、自分のアドバイスが正しいのか、ほかの視点はどうなのかと自信を持てなくなってしまうこともあり得ます。FPとして、自分の立場を明確にする指針として「お客様の本当の利益のために学び続ける」という軸が必要なんです。
お客様の人生を背負うFPは孤独で、迷ってしまう部分もあると思うんです。成長しているのか、自分のアドバイスは正しいのか。自信は資格を取っただけではつかなくて、やはり豊富な経験があってこそ身につくものだと思います。
かといって、経験は一朝一夕で積めるものでもありません。山中塾では経験不足を補うために、誰かが事例を相談するとすぐに他のFPからフィードバックが返ってくるSNS上のプラットフォームを設けています。
同じ志を持った仲間がいることで、自分は間違っていないと安心できる、それぞれの経験を共有することで、お互いに励まし合いながら高めあえる。それが山中塾であり、私が若いFPにできることかなと考えています。
——山中さんは多くのFPを見てこられたかと思います。そのなかで、相談者に支持される人気のFPに共通する要素は感じましたか?
自分を飾らないことが、FPとして人気になる秘訣だと思います。私たちFPは自分自身が売り物です。信頼してもらわなければ、お客様は離れていってしまう。誰かに見つけてもらうために自分を着飾ってしまうと、実際に会ったときのイメージが違っていて、不信感につながると思うんです。
私も自分で執筆した記事や書籍を通じて相談に来た人に「イメージ通りの人だ」と言ってもらえるよう心がけています。常に自分がブレないようにして、ありのまま、考えていることを発信し続ける。それが大切です。
あとはFP以外の相談業にも言えることかもしれませんが、相手に応じて「言葉」を変えてあげられる人。今まで見てきたこと、知ったこと、感じたことが同じ人はいません。その人にとって理解しやすい言葉や話し方も違います。
同じアドバイスでも分かりやすい人の方が価値は高いですし、人気も出ますよね。FPアドバイスは実行してこそですから、相手の共感しやすい言葉で話すのも、寄り添い方の一つだと思います。