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【みさき透】高校の試験に「インベストメントチェーン」「顧客本位」の出題が?!こどもNISAで熱を帯びる金融教育と金融機関の関わり方

みさき透
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2026.02.05
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【みさき透】高校の試験に「インベストメントチェーン」「顧客本位」の出題が?!こどもNISAで熱を帯びる金融教育と金融機関の関わり方<br /><br />

 学校で金融教育への取り組みが熱を帯びている。2022年4月には小学校、中学校、高校の各課程で金融教育が必修化されたが、こどもNISA(新NISAのつみたて投資枠の一部で年齢制限を撤廃)が創設されることになり、「学校でも投資が身近になった」(神奈川県立の高校教諭)点も見逃せない。

 こどもNISAは0歳時から口座を開設できるが、幼児の口座での投資判断などは親などが担うとみられる。他方、一部の高校は株式投資シミュレーションを取り入れるなど金融教育に熱心で、「生徒が自主的に運用するケースもありそう」(都内私立高校の教諭)と話す。

 教育界にはこれまで「教室でお金の話はタブー」という風潮があるといわれてきたが、SNSを通じた金融トラブルの増加もあり、正しい金融知識を教えて「子どもたちに生きる力を与えたい」(群馬県教育委員会の元委員)と考える関係者も増えている。

  

必修化のインパクト、FDや運用業の高度化も授業に

 金融や投資を学ぶといっても、「投資しました。読みが当たりました。もうかりました」では授業にならない。

そこで注目されるのが、金融庁が作成したインベストメントチェーンの図だ。家計や金融機関など社会のさまざまな主体が参加し、資金を循環させて世の中を豊かにしたり、企業の成長を支援したりする仕組みや、その中での投資の役割を学ぶ必要があるからだ。

あるベテラン教諭は、この図が「販売会社等による顧客本位の業務運営の確保」や「資産運用業の高度化」といったキーワードが盛り込まれているため、穴埋め形式にするなど「試験問題を作りやすい」と打ち明ける。

 ただし、文部科学省の学習指導要領に基づいた教科書に、この図は見当たらない。教科書に載っていなくても、授業で取り上げていれば試験で出題できるが、生徒の理解を助けるものなので、次回の改訂ではインベストメントチェーンの図を教科書に入れてほしいという。現状の公共の教科書は「書きぶりが平板」と感じる教諭は少なくないだけに、一考の余地がありそうだ。

 

プラチナNISAからこどもNISAへ、シニアから子育て世代に舵を切る

 金融教育の関心を高めるのに一役買っているこどもNISAだが、26年度税制改正大綱の策定に向けた調整プロセスの初期段階では、毎月分配型投信なども購入できる高齢者向けのプラチナNISAの新設が本命だった。

 しかし、この構想が報じられると「また年寄り優遇だ」「運用が非効率の分配型を推すのか」などとネットなどで散々な評判となった。25年7月の参院選で子育て世代の支援を訴える政党が躍進したこともあって当局は方針を転換。対象とする世代が正反対となるこどもNISAの設立に動いた。

 他方、こどもNISAが始まるのに先立ち、教育目的でなされる資金贈与(特定教育資金贈与)の非課税措置が26年3月末で打ち切られる。こどもNISAの立ち上げは同非課税措置の廃止に対する「部分的な補償」という意味もありそうだ。

1人で年間60万円、累計でも600万円とこどもNISAは小粒な制度だが、特定教育資金贈与の代替として富裕層に広がれば、販売会社などにはチャンスかもしれない。こどもNISAを切り口に多額な金融資産を持ち、子弟の教育に熱心な「意識高い系」のファミリーを取り込む機会になるからだ。

 

「信用創造」で寝落ちする生徒、自分の知識に不安を感じる教諭も

 金融への教育熱は高まりつつあるが、生徒たちへの浸透は一朝一夕には深まらない。政治・経済の科目を受け持つ教諭は、「信用創造の説明に入ると眠り込んでしまう生徒が目立つ」と苦笑いし目に見えないものを教える難しさを訴える。実際、同じ政治・経済の授業でもテレビの映像などからイメージを持ちやすい政治の方が、生徒の理解度は高いという。 

一方、株式投資シミュレーションのように、任天堂やオリエンタルランドといった具体的な企業が対象になったり、数字でリターンが表示されたりする教材には興味を持つ生徒が多いという。ただ、授業でどこまでリターンの追求に重きを置くべきか、悩む場面もあるそうだ。

 また、学校のスケジュールの制約から1学期や2学期という単位で成績を付ける必要があり、「こんな短期間のリターンにどれほど意味があるのか疑問」とも漏らす。現状では「投資に興味を持てればよいとの考えでやっている」と話す。

 金融機関などに講師を依頼するケースもあるが、金融業界の常とう文句である「インフレが来てこれから生活が苦しくなる」というフレーズは、必要以上に生徒の不安をあおると受け止められているようだ。話している内容自体は正しくても、「子ども相手であることを忘れず、明るい未来が待っていることを伝えてほしい」と願っているという。

 

欠かせないのは教え手の知識に加え「生徒を飽きさせない工夫」

 金融教育が必修化されるなか、その担い手である教諭が異口同音に語るのは「自分たちの知識が不足している」ことへの不安だ。生徒向けの教育を進める前に、教える側の知識や理解を高める支援が必要になりそうだ。

 教材の改善を求める声もある。授業で生徒が眠ってしまうのはどの科目でも見られる光景だが、「信用創造」で眠ってしまう生徒が多いという前出教諭の証言どおり、「金融教育は眠る生徒が多い」のが現実だろう。

株式投資シミュレーションの人気は高いが、目先の株価を当てるゲームではなく、「投資した企業が成長していく過程、あるいは自分が起業してビジネスを大きくするといったストーリーを追うなかで、金融知識を学べないか」という指摘もある。

金融リテラシーを身に付け、こどもNISAで実践経験を積んだ世代が本格的に投資を開始すれば、資産運用業の市場は大きく伸びる。そのためには教育現場への支援が欠かせない。こうした面でも、金融機関などの役割は大きい。

 

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著者情報

みさき透
みさき とおる
新聞や雑誌などで株式相場や金融機関、金融庁や財務省などの霞が関の官庁を取材。現在は資産運用ビジネスの調査・取材などを中心に活動。官と民との意思疎通、情報交換を促進する取り組みにも携わる。
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