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金融業界人のための「霞が関の歩き方」

【みさき透】開戦前夜!?近づく貿易戦争の足音、新NISA2年目はゴールドに注目

金融業界人のための「霞が関の歩き方」2月号

みさき透
みさき透
2025.02.13
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【みさき透】開戦前夜!?近づく貿易戦争の足音、新NISA2年目はゴールドに注目<br />

トランプ大統領は公約通り就任直後に追加関税を発動した。カナダとメキシコへの関税措置は直後に発動延期となったが、世界の株式相場は大きく動揺した。ディール(取引)がディード(行動)にエスカレートしないとも限らない。新NISA2年目を迎える投信の販売会社は波乱の相場展開も視野に入れつつ、顧客に適切なアドバイス、商品提案に努めるべきだろう。

特に1年目は商品性では低コストのインデックス投信、投資対象は米国を中心とした海外株式の一人勝ちといってよい状況だった。「貿易戦争」の足音が響く中での2年目は前年とは違う戦略が求められるはずだ。

では、何に着目するか。金(ゴールド)だろう。戦争やインフレに強いという伝統的な側面もあるが、国家の管理が及ばない性質がこれまで人気を集めてきた海外株式を組み入れるインデックス投信を中心にしたポートフォリオの補完に有効と思われるからだ。

某非鉄大手、金で社員が資産形成 ただし現物で

私事で恐縮だが、23年の秋に家族が非鉄金属の大手企業に転職した。非鉄とは厳密には金で、国際商品としての金を取引するほか、金を用いてスマートフォンの回路基板や半導体、宝飾品などを製造したりしている。つまり、金の取引業者であり需要家だ。役職は人事部長なので、従業員のライフプランや資産形成などにも目配りしている。

家族によれば、社員の間で会社の制度を利用した金への投資が普及しているという。ベテランの社員の中にはちょっとした資産家が多数いるという。ここ数年の金価格の高騰と金の国際的な取引通貨であるドル高で保有資産の時価が投資元本の数倍になるケースも少なくないそうだ。

ただし、金の売却益は総合課税の対象だ。給与など他の収入がある場合、50万円の特別控除を除いた売却益を給与などと合算し、所得税や住民税を払う。所得税などは累進性があるため、給与などの額が多いほど税率が上がる。ケースによっては金の売却益に50%以上の税金がかかることもある。

他に収入がなく、5年以上の長期保有という最も有利なケースであっても所得税と住民税が課せられる。ただし、この場合も50万円の特別控除はある。

長年にわたり会社のビジネスに貢献し本業にかかわる金への投資を続けても、何かの事情で一般的な給与所得の収入が最大になる50代半ばで金を売却すると、その投資成果の5割強を国などに収めることになる。ちなみに、金の売却益は総合課税なので給与に課せられる所得税なども増える恐れがある。

投信ならば金もNISAで投資可能、人事部長も強い関心

そこで家族に話した。「投信でも金に投資できる。投信ならばNISAやiDeCoの口座で買えるので、税制メリットが大きい」と。さらに、この会社は確定拠出年金(DC)を採用しているので、ラインアップに追加すれば、「従業員の関心を高めたり投資教育を実施したりするのに効果的だろう」と付け加えた。

人事部長である家族は非常に興味を持ち、金に投資できるファンドについて詳しく尋ねてきた。運用会社や販売会社の利益に関与せず、純粋に従業員の老後に向けた資産形成を案ずるポスト、つまり「中立的アドバイザー」と立場の重なる者が関心を示すことは我々のビジネスにも参考になるのではないか。銀行などの顧客で金に興味があるという人がいれば、まずは投信を通じた購入を勧めるべきだ。

国内で販売されている投信のうち、自分の知る限りで欧州系の運用会社1社と国内の大手運用会社1社がそれぞれ、金に投資するファンドを提供している。興味があれば調べてみるとよい。

ただし、投信には購入時に販売手数料がかかり、保有期間は資産残高に応じて信託報酬もかかる。投信はNISAなどを利用した非課税メリットがある一方、取引や保有にコストが課せられるので、顧客にはその点を十分に周知する必要がある。

さらに、上場投信(ETF)ならば銀行窓販などで扱っている公募投信に比べ、低コストでの投資が可能だ。地方銀行などは本体でETFを扱えないが、グループの証券会社を介したETFの提案も検討すべきだろう。

金(かね)ではなくゴールド、それがポートフォリオに必要だ

当たり前の話だが、ここまで金のことを「金(きん)」と表記してきたが、非鉄業界の人たちはこのマテリアルを金ではなく、「ゴールド」と称する。「金」と書くと(きん)ではなく(かね)と読まれるケースがあるからだという。

「かねではなくゴールド」――。ここに金投資の本質が潜んでいる。かね、言い換えれば通貨は国家が管理するもので、通貨に対するコントロールを失った国家は近代国家として崩壊状態にあるといえる。

他方、金が取引を媒介した歴史は近代国家より古く、国家権力の圏外に存在する。1971年8月まで米国がドルと金の交換を約束していた事実は金の存在がドルの価値、さらには米国の通貨発行権を支えていたといえる。

ドルと金の交換は停止されたが、いまでも金は国家権力の掣肘(せいちゅう)を受けない。ということは、これから始まるかもしれない貿易戦争に巻き込まれない資産といえる。さらに貿易戦争を嫌う資金の受け皿にもなり得る。

このことはインデックス投信などを通じて海外株式を保有している既存顧客のポートフォリオに分散効果を提供できる絶好の資産であることを意味している。他方、販売会社も金に投資する顧客が増えれば、預かり資産の多角化につながり、ビジネスの安定化に寄与する。金投資の提案は買い手と売り手の双方にメリットのあるディールとみているが、いかがだろうか。

トランプ大統領は公約通り就任直後に追加関税を発動した。カナダとメキシコへの関税措置は直後に発動延期となったが、世界の株式相場は大きく動揺した。ディール(取引)がディード(行動)にエスカレートしないとも限らない。新NISA2年目を迎える投信の販売会社は波乱の相場展開も視野に入れつつ、顧客に適切なアドバイス、商品提案に努めるべきだろう。

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著者情報

みさき透
みさき とおる
新聞や雑誌などで株式相場や金融機関、金融庁や財務省などの霞が関の官庁を取材。現在は資産運用ビジネスの調査・取材などを中心に活動。官と民との意思疎通、情報交換を促進する取り組みにも携わる。
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