本日は、私に職業人としての勘所を教えてくれたアイスホッケーからの学びをお伝えしたいと思います。
俗に、スポーツの世界では「攻撃は最大の防御」と言われ、ビジネスや経営の世界でも使われています。10月14日の日経新聞「交遊抄」で日本オリンピック委員会理事の谷本歩実氏はコマツの社長だった坂根正弘氏が大事にしていた考えが「攻撃は最大の防御なり」と紹介されています。
奇をてらうようですが、私は「ディフェンスこそが最大のオフェンスである」と考えています。26年前に解禁された銀行等金融機関での投資信託窓口販売における基本スタンスとして、「ディフェンスこそが最大のオフェンス」を掲げました。
フィナシープロ読者の皆さまのなかで、アドバイザーの方々は、営業活動を通じて収益を稼ぐという意味で、スポーツで言えば得点することが仕事のオフェンスの選手とみなすことができます。一方で、法務・コンプライアンス部などの管理部門の方々は、様々なトラブルを未然に防ぐため社内オペレーションの監視や業務効率化を進めるという意味で、失点を防ぐディフェンスの選手と言えるかもしれません。それぞれが自分の職務を全うすることは当然です。
しかし、アドバイザーの方々は、コンプライアンスの理解と遵守はもとより、管理部門をはじめとした他部署の業務フローをしっかりと理解しておくべきではないでしょうか。また、管理部門の方々も杓子定規にならず、アドバイザーの皆さまが具体的にどのような活動を行っているか認識すべきだと考えます。なぜなら、このような行動や姿勢の先に、お客さまに信頼される、お客さま本位の営業があると考えるからです。
私が、このような思考に至ったのは、アイスホッケーのGK(ゴールキーパー)であったことと無縁ではありません。
サッカーやハンドボールではゴールを守る選手はゴールキーパー(Goal Keeper)と呼ばれますが、アイスホッケーではゴーリー(Goalie)と呼ばれています。私は大学入学時に、偶然、経験のないアイスホッケーにめぐり合い、半ば強制的に割り当てられたポジションがゴーリーでした。その後、私はゴーリーという専門ポジションについて、自分なりにまとめてみようと考えました。自らの経験に加え、当時日本語の書籍がほとんどなかったので、本場のカナダや米国から本や雑誌を取り寄せ、ゴーリーに必要な考えや姿勢等をA4のレポート用紙10枚に「アイスホッケー・ゴーリー論」としてまとめました。実は、これが社会に入って役に立ったのです。
最後の砦を守る人と見られがちなゴーリーですが、実は攻撃の起点になっているのです。アイスホッケーという競技はゴール裏のエリアも使えるという、極めて稀なスポーツです。このゴール裏こそが攻撃の起点であり、ディフェンスの権化と見られがちなゴーリーの活躍の場でもあるのです。
翻って、お客さまが納得して投資をされるのは、最終的にはアドバイザーとお客さまのコンタクトによるものですが、そこに至るまではコンプライアンス等の管理部門の方々の知見等を必要としているのではないでしょうか。
さらに、管理部門の方々のアドバイスが、無駄に見えると思っていたら大きな勘違いではないかと思います。人生には無駄に見えて実は重要なことが沢山あります。それも、アイスホッケーから学んだ一つです。この学びは、次回のコラムにてお伝えいたします。